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パワハラはなくせる 部下は家族や恋人と思え ダイバーシティ進化論(出口治明)

2019/7/6

写真はイメージ=PIXTA

パワーハラスメント(パワハラ)を防止する措置を企業に義務付ける関連法が成立した。大企業は2020年4月から、防止措置を講じることが義務になる。

かつて阪神タイガースの江本孟紀投手が「ベンチがアホやから野球がでけへん!」と監督に言って、現役を引退した。実際、社員は上司を選べない。いい上司に付くか、悪い上司に付くかで天国と地獄ほど違う。上司の存在は想像以上に大きく、労働条件の一部というより、100%以上と思った方がいい。

では上司とは何か。単なる機能の分担にすぎない。野球の監督と同じように、チームをまとめるためには上司という役割・機能が必要だ。チーム一丸となって動くためには、誰かが命令しなければいけないから部長や課長に指揮命令権を与えているのだ。決して人間として偉いわけではない。それなのに自分が偉いから命令できると錯覚する人が実に多い。パワハラが起こる理由はそこにある。

起こさないため、上司は家族や恋人に接するように部下に接してみてはどうか。家族や恋人に言わないようなことを、部下に言っていいはずがない。自分の言動がどこに出ても恥ずかしくないものであれば何の問題もないのだ。

怒りの感情が湧いたときは、一呼吸してから発言しよう。怒りは原始的な感情だが、人間は前頭葉の働きによって鎮めることができる。ただ働き始めるまで5~6秒かかる。知識は力。その場で怒りを爆発させれば動物と同じだ。自分の成功体験から根拠のない精神論でマネジメントするのではなく、勉強して合理的なマネジメントをやらなければ上司になる資格はない。

コンプライアンスとは何か。職場で起こる全てのやりとりが明るみに出ても社会の共感を得られることだ。そう考えたら「おいコラ」「バカ!」なんて言えないはず。これからの組織はパワハラに限らず、組織における言動が全て明るみに出ても、何一つ恥じることなく経営説明責任が果たせるようにしなければならない。コンプライアンスとは、法令順守のような狭い意味ではないのだ。

パワハラに遭った部下はもちろん、通報すべきだ。ためらう人もいるだろうが、よく考えてほしい。通報しなければ、その上司は気付かないままパワハラを続け、他にも犠牲者が出るのだ。パワハラ上司は一掃しなければいけない。

出口治明
立命館アジア太平洋大学学長。1948年生まれ。72年日本生命に入社、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを務める。退社後、2008年にライフネット生命を創業し社長に就任。13年から会長。17年6月に退任し、18年1月から現職。『「働き方」の教科書』、『生命保険入門 新版』など著書多数。

[日本経済新聞朝刊2019年7月1日付]

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