年金はいくらもらえるの? データで読み解く老後生活老後のお金 100年の計(1)

「公的年金だけでは老後に約2000万円不足」と指摘した金融庁の報告書が議論を巻き起こした。「老後のお金」はいくら必要なのか、いくら足りないのか。データに基づいて年金や資産形成について考えたい。第1回は老後生活の土台となる公的年金の実態だ。

公的年金はよく「2階建て」と表現される。1階はすべての人が受け取る国民年金(基礎年金)。2階は会社員や公務員だった人などが国民年金に上乗せして受け取れる厚生年金だ。それぞれの平均額はどのぐらいか見てみよう。

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業年報(2017年度)」によると、厚生年金(基礎年金含む)の受給額は男性が月平均で16万5668円、女性は10万3026円。男性は月15万~20万円が39%と最も多く、女性は月10万円未満が51%を占める。厚生年金は現役時代の収入水準が年金額に反映するため、女性より男性の方が高い。

さらに差が開くのは自営業者や専業主婦など、1階部分のみの人の年金だ。男性が月平均5万8754円、女性は同5万3013円。国民年金は保険料の納付期間で年金額が決まり、未納期間などがあると満額(19年度は月約6万5千円)に届かない。

対する支出はどうか。65歳以上の夫婦世帯の月平均支出は厚労省「老齢年金受給者実態調査(17年度)」によると、月25万4千円。60代後半が最も高く(26万4千円)、以降は加齢とともに減少していく。

金融庁の報告書が問題になったのは、個人差が大きい年金額や支出を平均値でくくり、「月5万円の赤字」という文言が独り歩きしたこと。確かに、自営業者や妻が専業主婦の世帯は、年金だけでは赤字の可能性が高い。一方、夫婦共働きなら世帯の年金の平均受給額を単純合計すると、世帯受給額が月約27万円となり収支はトントンだ。

さらに見逃せないのは、公的年金だけで生活している高齢者は半分程度しかいないという実態だ。

前出の「実態調査」によると、65歳以上の43%が「公的年金以外の収入あり」と回答。収入総額に占める公的年金の割合は全体では82%だが、60代後半に限れば72%に下がる。

企業年金や個人年金、不動産収入などのほか、働き続けることで収入を確保していることがわかる。65歳以上の男性32%、女性18%が働いていて、60代後半に限れば男性53%、女性35%と高い比率となる。

ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫主任研究員は「老後も働くと聞くとうんざりする人も少なくないが、週2~3回でもいいので細く長く働くことが有効な老後の備えになる」と指摘する。

(岡田真知子)

[日本経済新聞朝刊2019年6月29日付]