スーツケース、ブレスレット…手塩にかけて自分仕様に
装いに一家言を持っているファッション業界人たちが、自分らしさを深めてきた愛用品とは? ともに時間を共有し、歴史を刻んできたモノへの思い入れやエピソードを語ってもらった。
GLOBE-TROTTER/
グローブ・トロッターの「オリジナル」スーツケース
― ブリティッシュ・ラグジュアリー ブランド・グループ
代表取締役CEO 田窪保寿さん
「30年使い続けてやっと自分が思い描いた色合いに染まってくれた」
「ヴァージン・アトランティック航空にいた頃、機長たちがグローブ・トロッターを携えて日本にやって来るのを見て、それがカッコよかったので、絶対に欲しいと思ってロンドンで購入したのが26歳。それから金具を何度か交換しながら、傷や汚れは気にせず、使い続けて5年目ぐらいから徐々に味わいが増してきました。本物は磨き続けることで、徐々に持ち主の色に染まっていくんですね。知れば知るほど、奥深くて、満足曲線が上昇して行く。この鞄はまさに英国文化そのもの」
HERMES/
エルメスのシェーヌ・ダンクル
― ベイクルーズ 上級取締役 和田 健さん
「今では身体の一部のように一緒に歳を重ねて燻し銀に輝き始めた」
「昔から指輪が苦手で、数少ない男のアクセサリーとして愉しんできたのが時計とブレスレットです。ゴールドのものは主張が強すぎて抵抗があるので、シルバーばかり。これは20年くらい前、パリ出張の際に購入して以来、冬場でセーターに引っかかりそうな時に外すぐらい。ほぼ毎日着けていますので、磨かなくても変に黒ずむこともありませんし、傷や汚れも一切気にしません。Hモチーフのチェーンが連なる重厚感と手を動かした時に、コマ同士が当たる音も、心地良く耳に馴染みます」
CONVERSE/
コンバースのオールスター
― サザビーリーグ エストネーションカンパニー
プレジデント 大田直輝さん
チープ・シック、崩しの楽しさを足元から教えてくれた
「チープ・シック育ちで、'90年代後半、クラシックからモードやカジュアルに着崩すスタイルが流行って、ディオールやサンローランのセミフレア調スラックスにこの靴を合わせて、多い時は週5日も。ソールも薄く、返りが良くて、アッパーのステッチもシンプルで使いやすかったんです。ウッディ・アレンがタキシードに合わせていた姿は衝撃的でした。この靴を通して、様々なスタイルを学ばせてもらいました」
FUJITO/
フジトのテア
― ソブリン ディレクター 太田裕康さん
自分の髪色とともにいい味に色落ちしてきた
「リヴェラーノで展開しているオーダーデニムを作ってもらっていたのがご縁ですから、もう10年以上。リジッドを買って、一回穿いたら必ず洗濯するようにと、藤戸さんからの教えを忠実に守ってきました。太腿あたりを手のひらで擦ったり、脇の縫い目を爪で引っ掻いてアタリを付けたり。手塩に掛けて育ててきました(笑)。今では自分も白髪に変わっていくように、ともに歳を重ねていい色落ち具合。革パッチの飴色具合も堪りません」
ALDEN/
オールデンのカーフ製タッセルモカシン
― チューブ代表 斉藤久夫さん
大味に見えるけれど、実は繊細。30年変わらぬ美しい顔に惚れ惚れ
「オールデンの魅力はコードバン靴にありますが、私はシワの入り方がより繊細で綺麗なカーフに惹かれました。30年前は明るい茶色でしたが、黒色クリームで、徐々に深みのある茶にしていきました。履きジワもキーパーを入れながら、長年掛けて思い描く表情に。長年連れ添っても、履き口が伸びてだらしなくなっていないのは、緻密にしっかり作ってある証。ローファーは米国製に限りますね」
BAARL
※表示価格は税抜きです。
撮影/野口貴司(SanDrago)、島本一男(BAARL)、ケヴィン・チャン、若林武志、椙本裕子、久保田彩子、武蔵俊介 スタイリング/四方章敬、宮崎 司(CODE)、佐々木 誠 ヘアメイク/松本 順(tsuji management)、勝間亮平 取材・文/伊澤一臣 文/秦 大輔、長崎義紹(paragraph)、吉田 巌(十万馬力)、小曽根広光、安岡将文
[MEN'S EX 2019年7.8月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。