働き方を極限まで絞る 100食限定ランチ店の経営理念青山ブックセンター本店

柱の側面で特設のミニコーナーを展開。著者イベントの告知や関連書とあわせて展示する(青山ブックセンター本店)
柱の側面で特設のミニコーナーを展開。著者イベントの告知や関連書とあわせて展示する(青山ブックセンター本店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は2~3カ月に一度訪れている準定点観測書店の青山ブックセンター本店だ。前回訪れたのは4月末。ベストテンを比べると、7冊が入れ替わった。新刊の少なかった10連休明けを乗り越えて、新たな顔ぶれがビジネス書を引っ張る。そんな中、書店員が注目するのは、脱業績至上主義を掲げる異色の飲食店オーナーが語る体験的経営論だった。

残業ゼロの外食店

その本は中村朱美『売上を、減らそう。』(ライツ社)。中村氏は京都で国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋(ひゃくしょくや)」など3店を切り盛りするminitts(京都市)の代表取締役だ。開業資金500万円で2012年に開業したこの店は1日限定100食の提供が売り物。それも午前11時から午後2時半のランチタイムだけの営業で売り切る。従業員たちの残業はゼロ。早く売り切れば早く帰れるというスタイルを続けている。

佰食屋や中村氏のことは既に知っているという人も多いだろう。長時間労働の印象が強い外食産業で残業ゼロを実現という点が注目されて、経済ニュース番組「ワールドビジネスサテライト」をはじめ、テレビの特集で何度も取り上げられ、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」にも選出された。その人自らが自分の言葉で事業の理念とよって来たるところを歩みとともに語っているのが本書の一番の読みどころだ。

開店直後は1日20食ほどしか売れなかった。それが口コミやネットニュースで評判が広がり、開店3カ月後テレビの街ブラ系番組で取り上げられるに及んでついに100食を売り切れるようになる。それでもその頃までは午後5時半から8時までディナータイムも営業していた。

だが、その後2人目の子供を授かったとき、転機が訪れる。「もしこの子が生まれたら、きっとまたお店に立つ時間は減るだろう。今度は長女の保育園の送り迎えもはじまる。……じゃあ、(夜の営業を)従業員たちにまかせる? いや、私ができないことを従業員にお願いするのは、申し訳ない。それなら思い切って、夜営業はやめてしまおう」と決断するのだ。オープンから3年たった頃だった。

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