――がんゲノム医療を推進する体制は十分に整っていますか。

「遺伝子パネル検査の希望者が急増した場合、病院側が迅速に対応できない可能性がある。検査の実施後、中核拠点病院や拠点病院でエキスパートパネルが開催され、治療方針が決まり、結果が本人に知らされるまで1カ月以上かかるケースも出るだろう。エキスパートパネルは各病院で通常週1回のペースで開催して、患者1人あたり平均10分程度の時間をかけて検討することになるだろう。検査を多数実施できても、エキスパートパネルの回数や時間は思うように増やすことは難しいので、これが全体の制約要因になるのではないかと思う」

――がん医療に関連した従来の遺伝子検査とどこが違うのですか。

「従来、コンパニオン診断と呼ばれる遺伝子検査が行われている。がん細胞の増殖と密接に関係する『ドライバー遺伝子』が判明しているものがあり、これが検査で判定できれば分子標的薬など特定の治療が効果的となる。このようにエビデンスが確立した治療方法とセットになったコンパニオン診断は、今回の遺伝子パネル検査と違ってどの病院でも受けることができるし、患者の負担額も少ない」

「コンパニオン診断は、これまでは遺伝子変異を1つずつ調べる方式で、複数の遺伝子を調べる場合は検体試料が足りなくなる問題もあった。だが6月には肺がんの主要な4つのドライバー遺伝子の変異を一度に調べられる新たなコンパニオン診断薬の保険適用が決まった。とても使いやすい遺伝子診断になると思われる。コンパニオン診断は、がん遺伝子パネル検査と相互補完的に、今後も利用されることになるだろう」

――がんゲノム医療を進展させるための課題は?

「今回、がん遺伝子パネル検査が保険適用になる条件として、患者の遺伝子情報を本人の同意を得た上で国立がん研究センターのがんゲノム情報管理センターに提供することになった。この患者データを新薬や新しい治療法の研究に役立てる。また、パネル検査と併せて患者の全ゲノム情報の提供をお願いすることも検討されている。こうしたデータを活用して、新薬開発や効率的な検査方法を開発・普及させることが重要だ」

(編集委員 吉川和輝)

「デンシバ Spotlight」の記事一覧はこちら

今、転職を検討しているあなたへ / 日経転職版

同世代の年収っていくらぐらい?

日経転職版でチェック

>> 年収チェックはこちらから