ロボットと人間、なぜ仲良し? ハーバードが驚く日本
佐藤智恵著『ハーバードの日本人論』
日本人が気づかなかった日本の価値を再発見できる1冊
「日本人はなぜ、細部にこだわるのか」「鉄腕アトムやドラえもんなどアニメのロボットが人間の友達として描かれる理由は」「周囲からどう見られるかを重視する文化は、なぜ生まれたのか」……。世界各国から数多くの観光客が訪れるようになった今も、日本は外国の人々にとって「ミステリアス」な国らしい。本書『ハーバードの日本人論』(中公新書ラクレ)は、ジャーナリスト出身で国際的なビジネスに詳しいコンサルタントが米ハーバード大学の教授10人に行ったインタビューをまとめた一冊だ。様々な学問分野で活躍する知性の語り口を通して、読者は日本の新しい魅力を発見することになるだろう。
◇ ◇ ◇
佐藤智恵氏
佐藤智恵氏は、1970年兵庫県生まれの作家・コンサルタントです。NHK、ボストン・コンサルティング・グループ、外資系テレビ局等を経て、2012年作家・コンサルタントとして独立。これまで『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)『ハーバード日本史教室』(中公新書ラクレ)などを出版しています。
最新刊『ハーバードの日本人論』は日本を研究対象にしているハーバード大の教授陣10人にインタビューした内容をまとめたものです。「なぜ日本人はロボットを友達だと思うのか」「なぜものづくりと清掃を尊ぶのか」「なぜ周りの目を気にするのか」など日本人が気が付かない日本人の特性について解き明かしています。
日本人がロボットを友達として描くワケ
日本人はなぜロボットを友人だと思うのか。(中略)
私は日本人が歴史的にテクノロジーを「理想的な社会を実現するのに不可欠なもの」ととらえてきたことと深い関係があると分析しています。
明治維新の後、日本は近代化に成功し、豊かな国になりました。(中略)
当時は、国全体が「殖産興業」に邁進していた時代で、政府も、科学技術教育に力を入れていました。そのため「技術やテクノロジーを身につけることが欧米に追いつくためには不可欠だ」という考えがどんどん浸透していったのです。
(第一講義「日本人はなぜロボットを友だちだと思うのか」 45ページ)
日本の漫画、アニメでは、鉄腕アトム ドラえもん、Dr.スランプ のように人間型ロボットを友達として描く作品が数多くあります。日本人にとっては特段、不思議とも思われないのですが、これが日本独特の感覚としてハーバードの学生を魅了するらしいのです。
ハーバード大でメディア論、映画学を研究するアレクサンダー・ザルテン氏によれば、押井守監督の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』が2017年に公開されたときには、主人公の草薙素子の人種をめぐってアメリカでは大論争が巻き起こったといいます。サイボーグの草薙素子を演じたのはスカーレット・ヨハンソンでしたが、米国内ではアジア人が演じるべきではないかという議論があったというのです。日本では聞いたこともありませんし、何が議論のポイントなのかもうひとつピンときません。