2019/6/29

いきいき職場のつくり方

それでは、がんと向き合うとき、働き手は、あるいは会社はどうしたらいいのでしょうか。

まず、自分ががんだと分かった場合です。

治療が長引きそうな場合や、長期間ケアしなければならない場合、信頼できる上司、人事担当者、産業医、保健師などに相談することが大切です。自身のがんの種類や、治療経過などを伝えることで、急な体調不良などで休んだり、通院したりすることを理解してもらい、協力を得られれば、余計な心配をしなくてすむことでしょう。自分で抱え込み、無理に出社して体調をさらに悪化させることのないようにしてください。

負担軽減へ職場の環境整備を

次に、社員ががんを発症したと分かった場合、会社は具体的にどうしたらいいのでしょうか。

まずは、主治医から診断書をもらい、就労可能かどうか、あるいは就労の条件を聞くことが必要でしょう。主治医が患者の具体的な仕事の内容まで把握するのはなかなか難しいでしょうから、その人の業務がどのようなものか知っている産業医の意見を聞くことも必要でしょう。主治医の診断書に加えて、産業医の面談で、就労について決めていくことが求められます。

経過が良くない場合は就労の条件を見直し、負担なく働いてもらえるように配慮すべきでしょう。就労時間、業務の変更など柔軟な対応が求められます。また、その社員の能力をいかに生かし、会社での役割を与えるかなど、ポジティブな観点からの対応が不可欠です。がんになっても安心して働ける職場づくりに努めることで、がんを発症していない社員も将来への不安を払拭することができるでしょう。

政府が2018年に閣議決定した「第3期がん対策推進基本計画」では、全体目標「がんとの共生」の中で就労支援の充実を強く求めています。がんと向き合いながら、働きやすい職場づくりが社会的に求められているのです。

会社にもしっかりと考えてもらいたい

がん発生の仕組みをご存じでしょうか。人間の体のなかでは毎日5000個の異常細胞が生まれるといいます。免疫細胞がこれを食べてくれるのですが、なんらかの理由で免疫細胞が弱ると異常細胞がどんどん増えてがんになります。加齢にともなう遺伝子の異常が、異常細胞の増加の原因とも考えられており、年齢を重ねるほどがんになりやすいといえます。

つまり、会社の中でもある年齢層になると、がんになる人が増えるというわけです。 だからこそ、会社にもしっかりと考えてもらいたいと思うのです。がんになってしまった社員が働くことに対して、躊躇(ちゅうちょ)するという会社もあるかもしれません。 しかし、働くということは、収入に加えて、生きがいとしても大きな意味を持ちます。こうした意志を支えていくことも、まさに企業の社会的責任(CSR)として求められる役割なのではないでしょうか。

※紹介したケースは個人が特定できないよう、一部を変更しています。

植田尚樹
1989年日本大学医学部卒、同精神科入局。96年同大大学院にて博士号取得(精神医学)。2001年茗荷谷駅前医院開業。06年駿河台日大病院・日大医学部精神科兼任講師。11年お茶の水女子大学非常勤講師。12年植田産業医労働衛生コンサルタント事務所開設。15年みんなの健康管理室合同会社代表社員。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

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