2019/6/29

いきいき職場のつくり方

主治医の診断は復職可能というもので、1カ月に1回、病院で治療と検査を行う予定となっていました。体調はというと、多少の目まいはあったものの食欲もあり、頭痛や倦怠(けんたい)感もなく、睡眠も取れているとのことでしたので、まず通勤時の体の負担をみるために、2週間の通勤訓練を行いました。特に問題もなかったので、体調不良の際は無理しないことを確認して、復職可能と判断しました。

まず、週3日、午前中3時間の短時間勤務(時短勤務)から始め、体調をみながら段階的に勤務時間を延ばし、復職後3カ月で時間外労働なしの通常勤務としました。現在も通院治療をしながら、勤務しています。もちろん、定期的に産業医との面談を行い、体調を確認しています。本人も「再発への不安感はあるものの、同僚と話をしたり、仕事をしたりすることで、病気を忘れられることもある」と話しています。

便潜血反応が陽性なら必ず内視鏡検査を

がんのリスクは社員に限りません。ある会社経営者の男性の事例です。定期健康診断のたびに、大腸がんを検査する便潜血反応検査で、出血を意味する陽性反応が出ていました。1000人を超える社員を擁する会社のトップなのですから、しっかり健康管理をしているはずだと思っていましたから、「便潜血反応には注意してくださいね。精密検査を早めに受けて下さいね」と念を押しましたが、忙しかったのでしょう、しばらく様子をみていました。ところが、あるとき病院へ行ったら、大腸がんだと分かりました。すでにいろいろな所に転移していて、それから3カ月で亡くなりました。

便潜血反応検査は定期健康診断の法定項目ではないので、健診でやっているところとやっていないところがあります。便潜血反応が陽性でも、95%以上の人は、がんではありません。しかし、検査で陽性反応が出たときは、早めに大腸内視鏡検査を受けるようにして下さい。 がん発見の指標になるからです。また、大腸がんであっても全ての人が便潜血反応で陽性が出るわけではなく約20%にとどまるといわれているのです。

早期に大腸がんが見つかったら、むしろラッキーと思ったほうがいいでしょう。 陽性が出たにもかかわらず、再検査で陰性だったら「問題なし」とする医師もまれにいます。もう一度、便潜血検査を行うのは意味がありません。 常に出血が続いているとは限らないからです。また、採取した便に血液がついていない場合もあります。 陽性でしたら必ず大腸内視鏡検査を受けてください。

「明日は我が身」と考える

一度、私が産業医を務める会社の人事部の担当者を怒ったことがあります。がんを発症してしばしば休む社員がいたのですが、その担当者が「われわれは株式会社なので生産性を上げなくてはならない。株主への責任があるのだから、著しく生産性に劣る社員はいらない」と言ったのです。これはさすがに行きすぎでしょう。がんは特別な病気ではありません。むしろ「明日は我が身」と考え、寛容であることが必要ではないでしょうか。

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