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師匠・植木等さんの親心に泣いた丼 小松政夫さん

食の履歴書

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NIKKEI STYLE

喜劇役者、小松政夫さん(77)の人生は21歳のとき、ある求人広告を偶然目にしたことで急転回した。当時人気絶頂だった植木等さんの付き人兼運転手となり、芸能界の扉を開く。必死だった下積み生活、親父(おやじ)さんに食べさせてもらった丼の味が忘れられないという。

アルバイト先の菓子店でつまみ食い

教師だった父親は戦後、福岡で洋菓子店を開き、外国人も買いに来るほど繁盛していた。物資の乏しい時代に、アンコ入りの紅白まんじゅうをよく作った。朝食はいつもハムエッグとトースト。「おぼっちゃまでした」

しかし中1のとき父親が亡くなると生活は暗転。6畳2間の狭い家に、母子7人が暮らした。母親は「マサ坊、高校にはやれんから中学を出たら働いてくれんね」と懇願。「毎日がどん底の貧乏」だったという。

自らの意志で定時制高校に進学。かわりに生活費を稼ぐため老舗和菓子店「石村萬盛堂」でアルバイトを始めた。

「おいしいんだ!」。つまみ食い厳禁の貼り紙がしてある前で、わざと店の商品である菓子をつまんだ。幼い頃から人を笑わすことが大好きだった。店の女将は他の者には厳しいのに「駄目っしょ」というだけ。「なぜか、かわいがってもらった」

高校卒業後、上京して役者になろうと考え、女将に「出世払いでお金を前借りできませんか」と頼んだ。女将は「辞めるときは前借りっていわないの」と言って、100円札を100枚手渡した。1万円は当時の大卒初任給とほぼ同額の大金だ。

ポークカツからトップ営業マンへ

どん底の貧乏からお茶の間の人気者へ――。サクセスストーリーの節目には、恩人たちとの出会いがあった。1人目がアルバイト先の女将とすれば、2人目は自動車ディーラーの元上司だ。

19歳で上京して劇団に合格したものの入団金が払えず、職を転々とした。事務機を売り込もうと自動車ディーラーに日参していたとき、一人の男性が近寄ってきた。

「空手チョップだよ~ん」。突然、力道山の物まねで胸をたたく。「何するんですか」と食ってかかると、黙って近所のレストランに連れ出された。「Youはこれを食え」。初めてのポークカツのおいしかったこと。説得に押され、自動車ディーラーへの転職を決心した。

営業部長だった男性とは妙に馬があった。「この人のためにがんばろう」。2年半、休みを一度も取らず毎日13時間働いた。いつしか毎月10万円を稼ぐ、トップ営業マンになっていた。

ある日、芸能週刊誌の3行広告が目に留まった。「植木等の付き人兼運転手募集。やる気があるならめんどうみるヨ~~」。月給は7000円。大幅な減収となる転身に同僚たちは驚いたが、営業部長は「お前に合っているかもな。後の仕事は俺が全部片付けてやる」と、文句も言わず送り出した。

昼食抜きで師匠の車磨く

人生最大の恩人、植木等さんとの師弟関係は有名だ。「親父さん」と慕って、一心に尽くした。

過労で倒れた植木さんの快気祝いのゴルフ大会。早朝、運転手として会場まで送り届けると、「プロの洗車を見せてやる」とパンツ一丁になって車を磨き上げた。

夕方になって、プレーを終えた人たちから感嘆の声があがる。「おっ、新車かい?」。苦労は報われたが、洗車に熱中するあまり食事を取ることをすっかり忘れていた。

ゴルフ大会からの帰り道。後部座席に体を沈めた植木さんが尋ねた。「おい、昼飯食べたか」「はい」「ウソつけ」。食事を抜いていることはお見通しだった。

「俺もあまり食べてないから、そば屋にでも寄ろう」。師匠と食事にいくときは、安いかけそばかラーメンを頼むのが常だった。このときもかけそばを選んだが、師匠の注文を聞いて驚いた。カツ丼と天丼。「よかった、親父さんすっかり回復したんだ」

ところが丼が運ばれてくると、師匠は「いけねえ、油ものは医者に止められていたんだ。お前、これも食べなさい」と勧める。最初から食べるつもりがないのに、腹をすかせた弟子にたっぷり食べさせんがための芝居だった。師匠の気遣いに触れ、泣きながら丼をかき込んだ。

「この男は今は私の運転手ですが、いずれ大スターになります」。植木さんは人に会うたび売り込んでくれた。その言葉通り、人気番組の出演をきっかけにスターへの階段を駆け上った。「いつも最高の人たちに巡り合った。だから今の自分がいるんです」

旧コマ劇場裏の台湾料理店

小松さんが30年以上通うのが、新宿・歌舞伎町にある台湾料理の名店「青葉」(電話03・3200・5585)。今はなき新宿コマ劇場の楽屋口のちょうど向かい。入り口脇の奥まったテーブル席が小松さんの指定席だ。まず店の名物の「シジミのニンニクしょう油漬け」(1000円)を注文し、最後に「フカヒレの姿煮」(6300円)で締める。

お酒が大好きな小松さん。「シジミは肝臓にいいしプクッとした独特の食感が最高」。台湾産は黄金色で、見た目も美しい。「黒色の日本産では客が満足してくれない」(李克順・社長兼総料理長)。肉厚のフカヒレはコラーゲンたっぷりで、舌の肥えた多くの食通をうならせてきた。レトロな雰囲気の店内には音楽が静かに流れ、古き良き「昭和」を感じさせる。

最後の晩餐

子どもの頃、父親の作るすき焼きが大好物でした。今でも肉は好きで、サーロインかロースの鉄板ステーキが食べたいですね。数年前、自宅近くにいい店を見つけ、妻とよく行きます。店主は無愛想ですが、焼き方が実に上手。口の中でとろける食感が最高です。

(木ノ内敏久)

[NIKKEIプラス1 2019年6月29日付]

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