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ビジネスに効く「文庫」はこれだ!

スタバを勝たせた映像解析とは 文庫で親しむ科学思考 第3回 サイエンス本

2019/6/29

土井英司氏(米ニューヨークのブライアントパークで)

手頃な価格とハンディーサイズの文庫本は、出張や旅行のお供に重宝するビジネスパーソンの心強い味方だ。「ビジネス文庫」カテゴリーの創設を目指して始めた「本当に使えるビジネス文庫」の企画。3回目は、ビジネスで使える「サイエンス本」を紹介する。案内役はメルマガ「ビジネスブックマラソン」を運営する土井英司さんだ。今回はビジネスに役立つ科学的思考がテーマだ。

◇   ◇   ◇

まず、サイエンスがビジネスに使える見本として最初に紹介したいのが、パコ・アンダーヒルのロングセラー『なぜこの店で買ってしまうのか』(早川書房)。

■選択肢は多ければ多いほど良いのか

パコ・アンダーヒル著、鈴木主税・福井昌子訳『なぜこの店で買ってしまうのか』

膨大な量のビデオテープを参照し、ショッピングにおける顧客の行動を導き出したという本書には、小売店の人なら「必読」と言えるほどの英知が詰まっている。

男性は試着した場合、65%が購入するが女性はそうでもない、というデータを見れば、KPI(キー・パフォーマンス・インデックス)を「試着」にすることの合理性が見えてくる。

他にも、ヒトは鏡の前では立ち止まる、女性は男連れだと買い物時間が短くなるなど、興味深い話がたくさん書かれている。

この知識をもとに、著者がスターバックスやGAPを勝利に導いたことがわかれば、読者も真剣に読みたくなるだろう。派手なキャンペーンにムダなお金を使わずとも、売り上げは上げることができるのだ。

続いてご紹介したいのは、コロンビア大学ビジネススクール教授、シーナ・アイエンガー氏が書いた『選択の科学』。ビジネスに直接役立つ部分は、おそらくここではないだろうか。

シーナ・アイエンガー著、櫻井祐子訳『選択の科学』

「6種類の試食に立ち寄った客のうち、ジャムを購入したのは30%だったが、24種類の試食の場合、実際にジャムを購入したのは、試食客のわずか3%だったのだ。大きな品揃えの方が、買い物客の注目を集めた。それなのに、実際にジャムを購入した客の人数は、小さな品揃えの方が6倍以上も多かったのである」

選択肢は多ければ多いほど良いという単純なものではない。絞り込んだ方が、売れることがあるのだ。

一方で、動物実験ではあるが、選択肢がまったくないことの弊害もうかがえる。

ある実験で、ラットを迷路に入れて、まっすぐな経路と、枝分かれした経路のどちらを選ぶかを見てみたところ、最終的にたどり着くエサの量は同じでも、ほぼすべてのラットが枝分かれした経路を選んだ。同様に、ボタンを押すとエサが出ることを学習したハトやサルも、複数のボタンのついた装置を選んだという。

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