先日公表された金融庁の報告書が話題になっています。騒動の是非はともかく、老後のお金について考えるよいきっかけになったのではないでしょうか。経済エッセイストの井戸美枝氏は、老後のお金を考える際、ざっくりと老後の収支を試算することをすすめているといいます。試算は特に難しいことはありませんが、考慮する条件が多岐にわたるため、どこから手をつけてよいかわからない、という場合が多いとのこと。そこで、老後の収支から「年金」と「生活費」に焦点をあてて、試算方法の一例を井戸氏が解説します。
「入」と「出」をざっくり予想しよう
老後に必要なお金は人それぞれ異なります。一概にいくら必要、ということはできません。過剰な意見やあおりに惑わされず、自分で考えることが大切です。
はじめに、老後の収入と支出にはどんなものがあるか、整理してみましょう。
人それぞれ事情は異なりますが、おおむね下の図の通りにまとめられます。

「入」には、国民年金・厚生年金といった公的年金や退職金・企業年金、個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)などがあります。いわゆる収入ではありませんが、預貯金や生命保険なども「入」に加えます。
「定年後の就労収入」については後述しますが、現役時代のようにフルタイムでバリバリ働く必要はありません。年金と生活費の差額分を埋められるだけの収入が得られればよいのです。むしろ、年金という確実な収入があることで、やりたい仕事にチャレンジできるかもしれません。
「出」は、生活費をはじめ、車・家電の買い替え、家のリフォーム費用、冠婚葬祭費などの特別な支出、医療や介護の費用などが挙げられます。生活費以外の支出は予測することが難しいため、平均費用を目安にしながら、ざっくり考えておきましょう。
よって、毎月の生活費は年金でまかない、医療や介護など、もしものときの費用は預貯金で準備しておければ理想的です。年金が生活費よりも大幅に少なくなりそうであれば、生活費の見直し、年金の上乗せ(iDeCoへの加入・繰り下げ受給・後納制度の利用など)、相応の貯金をする……などの対策をとります。