最新技術で名建築を復元 大丸心斎橋店本館が9月開店

日経クロストレンド

インバウンドを意識した9階のエンターテインメントゾーンも見逃せない。「ポケモンセンターオーサカDX&ポケモンカフェ」と「ジャンプショップ」に加え、フィギュアの造形企画製作会社として名高い海洋堂とタリーズのコラボショップも登場。日本のポップカルチャーをグローバルに発信する拠点と位置付ける。計画では今後、新本館と北館をつなぐ大宝寺通りの上空部の増築が予定されており、9階フロアは両館一体でインバウンドセンターとなる予定だ。

顧客が手軽に店舗に通える足元商圏に関しては、心斎橋エリアはこの5年で人口が10%以上増加。特に生活感度の高い住人が多く、地元客の取り込みも重要になっている。ラグジュアリーフロアの富裕層向けVIPルームはもちろん、地元客が日常的に利用できる売り場を設けたのも新本館の大きな特徴だ。「心斎橋はアジアへと商圏を拡大し、リピーターが増えつつあるが、一方でローカリティーの強い大阪の文化の中心地であり、地元客に対応していくことも大切」(山本社長)。

具体的には7階に自然光と緑を取り込んだ長さ60メートルの憩いの空間「心斎橋テラス(仮称)」が登場する。心斎橋は緑とカフェが少なく、リラックスできる場が限られているという顧客の声に応えた。テラスから続くフロアには、1階のコスメとは別に自然由来の原料を使用したナチュラルコスメが集積。フランス発のボタニカルコスメブランド「クヴォン・デ・ミニム」やスウェーデン発のライフスタイルオーガニックブランド「ラ・ブルケット」などが関西初出店する。

百貨店クオリティーのフードホール登場

地元客のデイリーユースに対応し、地下の飲食・食品売り場も2倍に拡充。インパクトのある売り場作りで滞留時間を延ばす工夫を凝らしている。中でも地下2階のフードホールは、ニューヨークのホテルの空間演出を採用し、吹き抜けに有名アーティストの作品を展示するなど、上質感がありながらカジュアルに集える空間になるという。

イートインと共用席を合わせて約300席を用意。国内2店舗目のトリュフ専門店「アルティザン ドゥ ラ トリュフ パリ」をはじめ、ミシュランの1つ星を獲得した串揚げ料理専門店「あげもんや 六覺燈」、ソムリエやきき酒師が運営するバーなど、環境だけでなく味も百貨店クオリティーにこだわった。

「顧客がメディアとなるような、ドラマチックな世界観を演出する」というフィロソフィを具現化したフードホール。百貨店クオリティーのテナントと店舗環境を目指した(画像提供:J.フロントリテイリング)

デパ地下には、GINZA SIXでも展開しているスイーツ専門店「イシヤ」と「ホンミドウ」が関西初出店するほか、ハンバーガーの「シェイクシャック」とハウス食品が手がける総菜店も心斎橋初登場。出来たてをその場で食べられるようイートインスペースも充実させる。

今回のプロジェクトで地元の声を最も反映させたのは、心斎橋の象徴として長年親しまれてきたヴォーリズ建築の保存、再現に取り組んだことだろう。旧本館は米国出身の建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズが日本で手掛けた西洋建築だ。保存対象となった部材は全1254パーツ。そのうち68%に当たる849パーツの再利用を目標に設計が進められた。特に御堂筋側の外壁は最新技術で保存、再利用。意匠性の高い旧本館のエレベーターホールや天井の幾何学装飾など、ヴォーリズ建築の代名詞とされるアールデコの装飾は1階の内装部分で可能な限り再現されているという。歴史的価値のある建築と最新のデザインが融合した特別感のある空間は必見だ。

旧エレベーターホールの建て替え後完成予想図。保存価値の高い内装デザインを可能な限り再現。採取可能な部材は現物を再利用し、困難な部材は原形を型取りして復元した(画像提供:J.フロントリテイリング)

本館オープンを機に、世界的なデザインの祭典「ミラノ フォーリサローネ」とパートナーシップを結んだ新プロジェクト「オーサカ×ミラノ デザインリンク」もスタート。同店のみならず、心斎橋の街全体を盛り上げていく。「小売りの根幹が揺らいでいる今、リアル店舗でなければ得られない価値を確実に提供することで集客につなげていきたい」と大丸松坂屋百貨店の好本社長は意気込む。

旧心斎橋筋玄関を華やかに飾っていた孔雀(くじゃく)のレリーフ。1925年から掲げられ、以来、大丸のシンボルとして親しまれてきた(画像提供:J.フロントリテイリング)

(文・写真 橋長初代)

[日経クロストレンド 2019年6月17日の記事を再構成]

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