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なやみのとびら、著名人が解決!

私のボケを心配する妻が煩わしい 作家、石田衣良さん

NIKKEIプラス1

2019/7/4

作家。東京都生まれ。2003年「4TEENフォーティーン」で直木賞。石田衣良のブックサロン「世界はフィクションでできている」主催(https://yakan-hiko.com/meeting/ishidaira/top.html)。

妻が私のボケを心配して、トイレの電気を消したかとか汚したかとか、とても細かくチェックしてきます。ありがたいようで、いささか煩わしい気もします。将来を考えると、そのくらいがちょうどよいのでしょうか。(東京都・60代・男性)

それはお気の毒に。トイレには一日何回もいくものです。そのたびに子ども扱いされて、トイレの電気を消したか、汚してないかと長年連れ添った妻が口うるさく質問してくる。日々たいへんなストレスですね。でも、奥さんがそんなふうになったのには、それなりの理由があったはずです。

もしかするとあなたはトイレの電気の消し忘れ、流し忘れの常習犯なのではありませんか。流していないトイレに入った奥さんの悲鳴も一度や二度ではない可能性もあります。あなたが気づいていないだけで、ほかにも思いあたることはありませんか。トイレくらいならまだかわいいほうで、家の鍵の締め忘れ、ガスの火の消し忘れ、スマートフォンの紛失など、致命的なうっかりの経験はないでしょうか。今回のメールだけでは、あなたの相談の正否は、判断がむずかしいところがあります。

もしトイレ問題だけでなく、ほかにもいくつか身に覚えがあるなら、思い切ってボケを心配する奥さんの先手をとって、専門の病院で認知症の検査を受けてみるのもいい手だと、ぼくは思います。きちんと検査を受けて、そんな傾向はなかったとうれしい結果がでれば、晴れて奥さんの小言にも反論できます。残念ながら初期の認知症が認められた場合でも、今はよい薬があるので進行を遅くすることができるのです。早期から始めたほうが薬も効果的なようです。

さて、ここまで真剣にあなたの「ボケ」について考えてきましたが、もちろんあなたのメールが全面的に正しくて、ただ奥さんが口うるさいだけというケースもあります。若いころから口うるさくありませんでしたか。この場合は別な意味で残念ながら、打つ手はありません。

あなたが何度言われてもトイレの電気を消し忘れるように、奥さんも最初からしつこく注意する性格なのです。結婚何十年目かはわかりませんが、奥さんの性格はもう基本的に変わらないし、直らないと覚悟を固めてください。

たいして成長も変化もせずに人は年をとっていくものです。それはお互いさまなので、奥さんの小言はさらりと聞き流してください。ぼくからの注意はひと言です。いい大人なのだから、トイレの電気はきちんと消しましょうね。

あなたの悩みをサイトにお寄せください。サイト「なやみのとびら」(https://www2.entryform.jp/tobira/)から投稿できます。

[NIKKEIプラス1 2019年6月29日付]

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