香水界の貴公子「似合うスタイルの探求が男の責務」キリアン創業者 キリアン・ヘネシー氏

「香水は人間のクリエーティブな感情を刺激します。作曲をするのと一緒です。芸術とビジネスの両面を味わえるところがエキサイティング」と話すキリアン・ヘネシー氏
「香水は人間のクリエーティブな感情を刺激します。作曲をするのと一緒です。芸術とビジネスの両面を味わえるところがエキサイティング」と話すキリアン・ヘネシー氏

高級香水「キリアン」は複雑な香りと宝石箱のような豪華なパッケージで世界中の「香りのマニア」を魅了する。ブランドの創業者はコニャックの名門「ヘネシー」家の御曹司キリアン・ヘネシー氏。職人の手になる芸術的な瓶が店頭を彩った1920~30年代の豊潤な香水文化をよみがえらせたいとの思いは強い。その美学を貫く姿勢は、妥協のない自身の装いにも表れる。「自分がよりよく見えるスタイルを探すのが男性の責務」と、こだわりの装いを語った。




■100年前のぜいたくな香水文化を取り戻したい

――コニャックの家業を継がずに香水の世界へ進んだのは何が理由だったのですか。

「家の仕事をしたくなかったのと、香水の世界に魅了されたのが理由です。学生時代、『香りとコミュニケーション』というテーマで卒論を書くために著名な調香師に会いに行きました。彼にすすめられて高級ブランド会社のインターンをすることになり、3000もの原料について学んだ末に、香水に興味を持ちました。ワインやコニャックをたしなむときにはまず香りを楽しむ段階があります。そもそも香水とお酒は近い存在だと思っています」

――香水の面白さはどこにありますか。

「人間のクリエーティブな感情を刺激するところですね。作曲と一緒で、自然とわき出てくる自分のアイデアと感情をベースにして新しいものを創り出せます。私は幼いころからビジネスにつながる教育を受けてきましたが、香水は芸術とビジネスの両面を味わうことができ、エキサイティングです」

クリムトの絵画に着想したという「ウーマン イン ゴールド」
「グッド ガール ゴーン バッド」は禁断の果実をめぐる物語からイメージした

「新しい香水を創造するプロセスは、命名からスタートします。名前は映画のタイトルと同じく、何よりも大事。香水に託したい自分の感情を調香師に伝える役割を担います。香水では背景にある物語と香りとがリンクしていなければなりません。たとえば『グッド ガール ゴーン バッド』は禁断の果実をめぐる物語。さわやかなイメージがアプリコット、女性らしさがバイオレット、デンジャー(危険)がレザーといった具合に、ストーリーに沿って原料を選びます。原料への投資はおしみません。天然香料を使えば、それだけ重層的でリッチな香りをより長く楽しんでもらえますから」

――20世紀初頭、香水瓶は一種の芸術作品でもありました。

「1920~30年代の華やかだった香水文化を取り戻したい。ですから私の香水はケースにも凝っています。こちらは鍵つきで鍵にはタッセルがついているんですよ」

「100年前には当たり前だった、ぜいたくな香水文化を現代に取り戻したいと、香水を収めるケースにも凝っています。どれも宝石箱やクラッチバッグとして使えます。デビュー作の黒のケースは13回もラッカー塗装した鍵付きのケースを採用し、鍵には絹のタッセル(房飾り)をつけました。細部のぜいたくにこだわっています。今の香水は使い捨てで瓶も捨ててしまう。キリアンでは詰め替えができます。『ディスポーザブル(使い捨ての)ラグジュアリー』は私の求めているものではありません」

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