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五輪新施設、大会後は「負の遺産」? 住民の活用カギ

2019/7/17 日本経済新聞 朝刊

「海の森水上競技場」は観客席の屋根を半分に縮小して予算を抑えた(東京臨海部)

2020年東京五輪・パラリンピックの会場として、東京都は計約1375億円を投じ6つの新施設を整備する。大会後も「レガシー(遺産)」として活用する計画だが、維持管理の負担は重い。大会後に採算が合うのは1施設のみで、残り5施設は年間計約11億円の赤字が発生する見通し。住民らに広く活用されるかどうかがカギになる。

東京・お台場から車で10分ほどの埋め立て地に完成したボートやカヌーの会場「海の森水上競技場」(東京臨海部)。6月16日には小池百合子都知事ら約400人が集まって完成披露式典が開かれた。日本ボート協会の関係者は「広く使えるコースで、大会もスムーズに運営できる」と喜ぶ。

既存の運河を全長2キロメートル、幅200メートルのコースとして活用し、2千人収容の観客席を設けた。本番時には仮設席を加えて最大1万6千人が収容可能となる。整備費は308億円。当初の見積もりは約1千億円だったが、客席の屋根を縮小するなどして圧縮した。大会後は主にボートの国際大会や練習場などとして活用する計画だ。

ただ車以外でのアクセスができないという難点があり、首都圏には1964年東京大会の会場となった戸田漕艇場(埼玉県戸田市)もある。水門の管理コストなどが重く、年間の赤字額は約1億6千万円に上ると試算されている。

葛西臨海公園(東京・江戸川)の隣地では73億円を投じた「カヌー・スラロームセンター」が7月から利用を開始する。全長200メートルに及ぶ国内初の人工コースで、毎秒12トンの水を大型ポンプで高さ約4.5メートルまでくみ上げて急流を作る。

大会後はラフティングなどができるレクリエーション施設としても活用する計画だが、年間の収入は1億6400万円にとどまり、約1億9千万円の赤字になると試算されている。

整備費が567億円に上る競泳会場「東京アクアティクスセンター」(江東)は20年2月に完成する予定。大会後も「競泳ワールドカップ」や「アジア水泳選手権」などで年間100万人の来場を見込む。それでも設備保守の業務委託費や光熱水費などがかさみ、年間で約6億4千万円の赤字になるという。

4月に完成した「夢の島公園アーチェリー場」(江東)、6月にも完成予定の「大井ホッケー競技場」(品川、大田)は、それぞれ年間1170万円、9200万円の赤字となる見通しだ。

12月に完成予定のバレーボールの会場「有明アリーナ」(江東)だけは、収益性の高いコンサート会場などに利用できることから年間3億5600万円の黒字が見込まれている。ただ、都はコンサート運営などのノウハウが十分ではないため、民間企業へ運営権を25年間94億円で売却する。

都の担当者は「自治体のスポーツ施設は収益ではなく住民へのサービスが目的。多くの人に安く使ってもらうことが重要だ」と強調する。とはいえ、十分活用されないまま赤字を生み続ければ「負の遺産」と批判を受ける可能性もある。

国士舘大の鈴木知幸客員教授(スポーツ政策)は「ロンドンやリオデジャネイロでも五輪後は会場施設の維持管理に苦労している」と指摘。「多額の費用をかけてでも施設を維持したいならば、その意義について都民らの理解を得る努力が必要だ」と話している。

■新国立競技場の完成は11月末

東京五輪・パラリンピックの開閉会式や陸上競技が行われる新国立競技場(東京・新宿)は11月末の完成に向けて、5月中旬に屋根の工事が完了した。施主となる日本スポーツ振興センター(JSC)の担当者は「8割くらいができあがった」としている。

整備費は1500億円超で、大会時には約6万8000席を設ける。大会後はサッカーやラグビーなど球技専用の施設(8万席規模)に改修され、JSCは運営権を民間に売却する方針だ。

国際大会や日本代表戦、全国大会の決勝戦のほか、スポーツイベントやコンサートでの利用料収入が想定される一方、年間24億円と試算される維持管理費は運営事業者の負担となる。JSCを所管するスポーツ庁の担当者からは「引き受ける業者がいるのか」と懸念も漏れている。

[日本経済新聞朝刊2019年6月22日付]

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