サイクルツーリズムで訪日客 自然豊かな地方ほど商機

自然を巡るサイクリングは外国人に人気がある
自然を巡るサイクリングは外国人に人気がある

長野県や県内の観光事業者などは自転車を使った観光振興策に乗り出す。協議会を6月18日に設立した。自転車利用者にターゲットを絞った観光サイトを今秋にも立ち上げるほか、イベントの支援なども担う。北アルプス周辺や諏訪湖など豊かな自然を巡るサイクリングは訪日外国人客らに人気だ。長野県などは「サイクルツーリズム」を信州観光の新たな柱に据える。

協議会は「ジャパンアルプスサイクリングプロジェクト」で、代表は2000年のシドニー五輪でマウンテンバイク日本代表だった一般社団法人ライド長野(長野県松本市)の鈴木雷太代表理事が務める。

協議会事務局はライド長野に置く。協議会には軽井沢観光協会や白馬村、近畿日本ツーリスト関東松本支店なども参加する。

19年度の事業費は609万円を見込む。長野県が全額を負担する。

同プロジェクトは10月をめどに専用の観光サイトを立ち上げる方針だ。サイクリングコースやトイレの設置場所、周辺観光施設などを紹介。空気入れや工具などを備えたサイクルステーションや自転車利用者が利用しやすい飲食店などの情報も提供する。

このほか、観光関連イベントの開催支援や、サイクリングコース整備への助言なども行っていく。将来は自転車を活用したツアー商品の開発・販売支援なども手掛ける考えだ。自転車関連の団体や事業者のつながりを強化することで、広域的な情報発信やイベント開催につなげる。

長野県は3月、自転車の観光への活用や安全な自転車利用のための「自転車活用推進計画」を策定した。22年度までに県内全域を周遊する700キロメートルのサイクリングコース「ジャパンアルプスサイクリングロード」を整備するとともに、県が管理する道の駅には自転車置き場や自転車利用者の休憩スペースも設置する計画だ。

観光のほか、健康や環境保全関連の政策に自転車の活用を取り入れる県内自治体は18年度に32市町村だったが、県は22年度に全77市町村に広げていく考えだ。自転車で県内全域を巡れる体制を整備することで、観光客の一層の呼び込みなどにつなげていく。

各地で広がるサイクルツーリズム

サイクルツーリズムで訪日客を開拓する動きは全国に広がっている。その象徴的な存在が広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ全長約70キロメートルの「瀬戸内しまなみ海道サイクリングロード」だ。

瀬戸内海に浮かぶ島々を結び、米CNNの「世界で最も美しいサイクリング道」の一つに選ばれたこともあり17年度の貸自転車は15万台と05年の約5倍に増えた。特に訪日客に人気があり、尾道市では08年に2万5千人だった外国人観光客が17年は28万6千人に増加した。

18年度は西日本豪雨の影響も受けたが、秋に開いた国際サイクリング大会には5万人強が参加・来場。9億円の経済効果があったという。

サイクルツーリズムは自然豊かな地方部ほど商機が見込める。青森市では青森中央学院大学の学生が、外国人に市内を自転車で観光してもらおうと、英語版と中国語(繁体字)版の地図を作製した。

JR青森駅横の「まちなかレンタサイクル」をスタート・終点として3ルートを紹介する。ルート沿いにある観光拠点や飲食店を分かりやすく表示・説明し、サイクリングを楽しめる地図に仕上げた。

北海道は18年4月に自転車の安全な利用と普及を目指す「北海道自転車条例」を施行した。サイクルツーリズムを観光の目玉として定着させるほか、レンタサイクル業者などによる損害賠償責任保険への加入も明記した。

[日経MJ2019年6月24日付]