●エクオール:
大豆イソフラボンが腸内細菌によって代謝されてできる成分で、女性ホルモンと似た働きをする。日本人の50%は、イソフラボンを代謝してエクオールを産出する細菌叢(そう)を持っていないといわれる。
●プラセンタ:
胎盤抽出物で、アミノ酸、核酸様物質、ビタミン、ミネラルなど、様々な栄養成分が含まれている。サプリメントの原材料には、主に豚や馬の胎盤が使われる。
「運動については、更年期症状をやわらげるのに、この運動が有効だ、という限定した運動方法のエビデンスはないんです。ただ、運動を取り入れることで、全体的に症状がやわらいでいく人もいます。また、めまいの症状がある人は、耳鼻咽喉科での治療法として頭部を大きく動かすような運動療法が取り入れられています」(善方さん)
更年期症状は自律神経の乱れからくるものが多いが、少し汗をかくような運動をすると自律神経を整えられると考えられる。
また、エストロゲンには肝臓でのコレステロール代謝を助ける働きがある。そのためエストロゲンが減ると、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)値が高くなり、脂肪がたまって体重が増加しやすくなる。代謝を良くして脂肪を燃やすには、やはり運動が有効だ。
「運動といっても、そこまで本格的なものでなくても、運動不足の人は、歩くだけでも良くなることがありますよ」(善方さん)
忙しくて時間がとれない人は、例えば、通勤時にはウォーキングシューズでひと駅やふた駅分を速歩で歩き、職場ではパンプスに履き替えるといった方法でもよい。
「インターネットの動画サイトにヨガやストレッチなど、家で簡単にやることができる運動方法を解説する動画もありますから、そういうものを利用するのもいいでしょう。私は、毎朝動画を見ながらラジオ体操をやっています。しっかりやると意外にいい運動になりますよ」(善方さん)
早寝早起きを心がけて睡眠不足にならないようにしたり、栄養が偏らないように食事に気を配ったり、自分をいたわることが大切だ。
ストイックに自分を追い込まない
運動をするのはいいことだが、「がんばらなくちゃ」とストイックにやりすぎるのは禁物だ。調子が良くないときに無理にがんばると、疲労がたまって悪循環に陥ってしまう。また、自分をストイックに追い詰める人は、思うようにできないことが精神的なストレスになり、気分が落ち込んでしまうことがある。
「ヨガのインストラクターで、強い更年期障害に悩んでいる患者さんがいました。ヨガは体調を整えるのにいいはずですが、講師という責任がある立場で、多くのクラスをこなすのは負担が大きいと考えて、担当するコマ数を減らすようにアドバイスしました」(善方さん)
昔から運動をしてきた人が閉経前のプレ更年期に差しかかると、走っても以前のようなタイムが出なかったり、思うように体が動かなかったりする。そうなると、「もっとがんばらなくちゃ」と自分を追い込んでしまうことがある。
「これまで運動に取り組んできた人でも、体力が落ちてくる時期があります。年齢と体力に合わせて、少し到達点を下げていくことも必要です」(善方さん)
更年期には一度、骨量チェックを

女性ホルモンには、骨を壊す破骨細胞を制御する働きがあるので、更年期に女性ホルモンが減ると破骨細胞が暴れだして、骨量がどんどん減っていき、骨粗しょう症になる可能性がある。骨がスカスカでも特に何の症状も出ないため、知らないうちに骨粗しょう症になり、圧迫骨折を起こして初めて骨密度が低いことを知る…という人が少なくない。更年期になったら、一度、骨密度を測定しておくといいだろう。
骨密度は、超音波を使ってかかとで測定する方法などもあるが、骨粗しょう症の診断には、2種類のX線を用いるDEXA法で、脚のつけ根か腰の骨を測定する。整形外科や人間ドックのオプションなどで測定してもらえる。
「今、意外に若い人の骨粗しょう症が増えています。若い人で、あまりにもやせすぎていて、食べないし、運動しないという人には若くても骨量が減少している場合が多いんです。ぜひ、ご自分の子どもの骨密度にも注意してあげてください」(善方さん)
骨量は成長期にぐんぐん増えて、20代頃にピークを迎える。あとは徐々に減っていき、閉経でがくんと減る。もし、20代頃に骨量が少なければ、更年期でがくんと減る前に骨粗しょう症になってしまう可能性もある。
もし骨密度が低い場合は、ビタミンDやK、カルシウムを積極的にとるなどして、骨粗しょう症を予防するとよいだろう。カルシウムは乳製品、小魚。ビタミンKなら、緑黄色野菜と納豆で。ビタミンDは、日光に1日15分くらい当たって摂取するのが効果的だ。
更年期に入ったなと思ったら、ストイックになりすぎず、上手に自分の体をいたわろう。つらいと感じたら、婦人科を受診して相談に乗ってもらうことも大切だ。相談するだけで不安がやわらぎ、気持ちが軽くなることもある。そのうえで、無理なくできる運動を上手に生活に取り入れながら、セルフケアをしてみよう。
(文 梅方久仁子)

[日経Gooday2019年5月31日付記事を再構成]