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セクハラ泣き寝入りは防げるか 改正均等法の強化点

2019/6/25

写真はイメージ=PIXTA

セクハラはしてはいけない――。今国会で改正男女雇用機会均等法が可決・成立し、職場でのセクハラ防止対策が強化された。セクハラ行為に対する価値判断を法律に初めて明記し、国の方針を明確にした。背景にはセクハラ被害が減っていない実態がある。安心して働ける社会の実現に向け、どう取り組むべきか。焦点や課題を専門家に聞いた。

■中央大学名誉教授 山田省三さん 「責任を直接問えるように」

――今回の法改正の意義は。

中央大学名誉教授 山田省三さん
中央学院大法学部助教授や中央大法学部助教授を経て、1996年に中大法学部教授。2004年から同法科大学院教授を務め、19年4月から現職。労働法が専門。70歳。

「注目すべきは、自社の労働者が他社の労働者に対してセクハラ行為に及んだ場合、他社からの社内調査などの協力要請に応じる努力義務を新設した点だ。努力義務にとどまるとはいえ、セクハラの救済範囲が自社から他社に広がったのは、一定の進歩があったと評価できる」

「想定されるのは、中小企業の従業員が、取引先である大企業の社員からセクハラ行為を受けたようなケースだろう。取引を巡る力関係の影響から被害を言い出しにくかったかもしれない環境が、変わる可能性がある」

「今国会では職場でのパワーハラスメント(パワハラ)防止を義務付ける関連法が成立した。パワハラの関心が高まっているなか、改めてセクハラ対策が強化されたことも忘れてはいけない」

――今後の課題は。

「男女雇用機会均等法は企業などにセクハラ対策を義務付けるが、日本には行為そのものを禁じて罰する規定はない。実際にセクハラに遭った被害者が直接、加害者の法的責任を問えるような法整備を検討すべきだと考える」

「セクハラの本質は職場における地位利用にある。企業は研修などを通じてセクハラ対策を講じてきたが、注意すべきは様々な権限を持つ管理職だ。自分では気づかないケースも少なからずある」

「もっとも重要なのは一人ひとりの意識だ。セクハラ防止規定が1999年施行の改正均等法に導入されてから20年、対策は少しずつ進んできたが、残念ながらいまだ根絶できていない。法律や制度による被害救済には限界がある」

「セクハラ行為の多くは、相手を思いやる気持ちの欠如に起因している。セクハラの根絶には、相手の人格を尊重することが欠かせない」

(聞き手は江藤俊也)

■元厚労省雇用均等・児童家庭局長 石井淳子さん 「働き方の進化に対応必要」

――厚生労働省でセクハラ防止に関わってきた立場から、法改正をどう評価するか。

元厚労省雇用均等・児童家庭局長 石井淳子さん
1980年東京大経卒、旧労働省入省。男女雇用機会均等法の改正に関わる。厚生労働省雇用均等・児童家庭局長などを経て2017年から三井住友海上火災保険、川崎重工業の監査役。

「セクハラについて『行ってはならない』とする責務規定が法律に明記された意義は大きい。これまでの法律は事業主に配慮や措置を求めてきたが、今回は『セクハラはいけないこと』だと国の施策としてきちんと位置づけ、事業主や労働者にもその責務を求めた。何もない混沌からここまで進んだと思うと感慨深い」

「被害を相談した人に対し、不利益取り扱いをしてはいけないと法律に記されたことも大きい。調査に協力した同僚の不利益取り扱いもいけないと示された。セクハラは密室で起きることも多い。被害者の同僚から証言を得やすくなったことで、企業にとって事実確認の難しさが少し緩和されるのではないか」

「改正男女雇用機会均等法が1999年に施行され、私は指針作りに関わった。2007年の改正にも携わった。今回の改正は第3ステージに入ったと受け止めている」

――就活セクハラについて付帯決議に盛り込まれた。

「就活セクハラは初めて社会に出る学生たちの夢や意欲などを奪う。コンプライアンスの不徹底は良い人材を失うリスクになる。フリーランスで働く人へのセクハラも問題だ。企業はしっかり対策を強化してほしい」

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