貴方はふわ系しゃりしゃり系?台所番長が選ぶかき氷器
合羽橋の台所番長が斬る! いまどきの料理道具を徹底比較
東京・合羽橋の老舗料理道具店「飯田屋」の6代目、飯田結太氏がイマドキの調理道具を徹底比較。今回は、ロングセラーと最新のかき氷器を比較検討します。
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こんにちは、飯田結太です。夏がやってきました。気温が25度を超えるのは年々早まっているような気もしますが、そんな温暖化を反映してか、夏の定番商品だったはずのかき氷器は、春になると急激に売れ始めます。今回は、台湾風「ふわふわ」かき氷ブームが続く中、使い方の幅も広がってきたかき氷器の最新バージョンと、ロングセラーの商品を徹底比較します。
ブームを受けて、かき氷器は需要が増え続けています。各社が競っているのは食感が「ふわふわ」なこと。どれだけふわふわに削れるかをここ数年追求しているようです。その筆頭といえるメーカーがドウシシャです。毎年新しい何かを加えたかき氷器を発表していて、その探究心に感心するばかり。2019年最新版は、削りの細かさを調整できるうえに、ハンディータイプにもなる2Wayが発売になりました。
一方、子どもの頃からかき氷が好きという人から絶大な信頼を寄せられているのが、池永鉄工のスワンシリーズ。電動式が主流の中、スワンは手動。重量感のある鋳鉄製の作りが、趣あっていいと男性に人気です。2万5000円と高額ですが、プロから見ると、鋳鉄製で安定感があり、耐久性も抜群、さらに、従来の業務用は置き場所に困るくらい大きいサイズなのに対して、スワンはコンパクトといいことずくめ。価格も、平均10万円もする業務用のかき氷器に比べるとリーズナブルでコスパがいいと好評です。
ではさっそく、氷を削って2つを検証します。
新しい料理法になる? レストランで人気急上昇
かき氷といえば、上からシロップをかけたり、フルーツやあずきを盛りつけたりして食べるのが定番。しかし、最近、パスタの上からかけたり、だしを凍らせてふりかけたりなど、スイーツではなく、料理として出すかき氷を使うレストランが増えてきました。
しかし、通常のかき氷器は皿を下に置いて、そこに削った氷を持っていく卓上式のもの。料理を盛り付けた大皿は、かき氷器の下に入らないので、まずは小皿に削ってから、スプーンなどで料理の上にふりかけるという二度手間でした。そうなると、削りたての食感を味わうのはなかなか難しい。そこで登場したのが、料理用のかき氷を意識した、ドウシシャの「とろ雪Wふわふわ電動かき氷器」(以下、とろ雪W)です。
とろ雪Wは、卓上タイプとして使えるのはもちろん、上部だけをはずしてハンディータイプとしても使える2Way。付属の製氷カップで作った氷をセットしたらボタンを押すだけで削られた氷が勢いよく出てきます。上部には取っ手が付いているので、片手で持って、盛り付けた料理の上からまんべんなく氷をふりかけることができるのです。
また、ダイヤルを回すことで、刃の高さを調節できるのも特徴のひとつ。削られる氷の薄さが変わるので、食感を変えられます。まずは、最も細かい状態で削ってみました。
●新雪のようなふわふわに
ボタンを押すと、氷が勢いよく出てきました。モーター音がうるさいのが気になりますが、削られるスピードが速いのでラク。一見でわかるくらい細かくて、まさに新雪のようです。食感は、口に入れるとホロホロと溶けてびっくり。食感は予想以上にふわふわ、ホロホロですね。
●かむと音がする食感
次に、最も粗い状態にセットして削ります。まず出てくる氷の大きさが違います。まるで、ガラスを割ったような見た目。ここまで粗くできるのも面白いですね。食感は、ジャリジャリ。かむと音が聞こえるくらいで、先ほどとはまるで違う味わいになりました。この食感はアイスクラッシャーを食べているようです。
氷の味わいがいろいろと変えられるので、台湾風のふわふわかき氷をはじめ、うどんやそばの上からジャリジャリ感のあるだしをふりかけたり、トマトソースを凍らせてパスタの上に盛り付ければ冷製パスタになったり、料理の幅が広がりそうですね。
昔ながらののど越しよいかき氷に
スワンのかき氷は、氷の細かさは調節できませんが、手動のため、音は静か、シャッシャという音とともに氷が器に落ちてくるのがなんとも郷愁を誘います。さらにスワンが人気のワケは、ハンドルの回しやすさ。重量があるぶん、かき氷器が動くことがないので安定して、片手で力を入れることなく回せます。
削られて出てくる氷は縦長。霜柱のような形が美しいですね。これも昔のまま。食感は、ホロホロふわふわな感じは弱いですが、シャリシャリしていて口溶けをしっかりと感じます。シロップをかければ程よく染み込んで、昔ながらの露店のかき氷ですね。台湾風のふわふわ感は、やさしいのですが存在感がないので、物足りないと感じる人は、こちらをお薦めします。ただし、料理に使うには少し物足りないかもしれません。
2つのかき氷器を比べた結果、スイーツだけではなく、料理にもいろいろ使いたいなら、ドウシシャのとろ雪W。昔から変わらない、日本のシャリシャリしたかき氷を楽しむならスワンでしょう。私見でまとめるなら、とろ雪Wは海外の料理。スワンは日本食ですね。
今はかき氷がブームになり、カフェなどで高級なかき氷が提供されていますが、そのきっかけとなったのは、やはり、かき氷器の進化があってこそだと思います。料理の進化は道具の進化があってこそのもの。そう考えると、かき氷は、おやつではなく、ひとつの料理法として確立して、通年使われていきそうな予感がします。来年のお正月には、おせち料理のなかに、だしかき氷の一品があったりして。そうなったら面白いですね。(談)
(文 広瀬敬代、写真 菊池くらげ)
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