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ドーナツの聖地ロサンゼルス 移民が育んだ甘い誘惑

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/6/30

ナショナルジオグラフィック日本版

ラ・プエンテにあるドーナツ・ホールは店の両端に巨大なドーナツを配した建物で、ドライブスルーの車は2つのドーナツの下を通り抜けて注文する(PHOTOGRAPH BY THEO STROOMER)

米国ロサンゼルスの食といえば、何を思い浮かべるだろうか? ケールサラダやアサイーボウルといったヘルシー食も人気だが、実はロサンゼルスはドーナツ好きの聖地。個人経営のドーナツ店が1500近くもあり、たっぷりの油で揚げたおいしいドーナツがあちこちで提供されている。

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ハリウッドにあるユニバーサル・スタジオで販売されている巨大ドーナツ(PHOTOGRAPH BY THEO STROOMER)

ロサンゼルスが米国のドーナツ文化の中心地となったのは1970年代のことだ。カンボジア移民のテッド・ノイさんはカリフォルニア州にやって来ると、自身のドーナツ店をオープンした後、祖国の混乱を逃れてやってきた仲間の難民たちがそれぞれの菓子店をつくるのを支援した。今ではロサンゼルスのドーナツシーンの象徴にもなっているピンク色の箱に、ドーナツを入れたのはノイさんが最初だ。

ノイさんの遺産は現在まで受け継がれている。今でも、多くのドーナツ店のオーナーは、カンボジア系米国人だ。

ドーナツ・キングIIとデールズ・ドーナツは人々の関心を引くため、鉄骨フレームにセメント、水、砂の混合物ガナイトを吹き付けた巨大なドーナツを建物に載せている(PHOTOGRAPH BY THEO STROOMER)
デールズ・ドーナツ(PHOTOGRAPH BY THEO STROOMER)

「ドーナツ店はカンボジア人にとって、米国での成功をかなえてくれるものでした。チャンスをつかむための鍵でした」と、サンタモニカで約40年続く家族経営の店、DK’sドーナツのオーナー兼CEOであるメイリー・タオさんは語る。「ドーナツはコミュニティーを一つにしてくれます。国境や人種の違いも、それを壊すことはできません」

DK’sドーナツの商品は信じられないほど多彩だ。フィリピンの紫イモ、ウベ味のドーナツから赤いベルベットを思わせるワッフルドーナツまで、120種類もの商品が販売されている。ブリンキーズ・ドーナツ・エンポリアムはカンボジア系米国人の父と娘が経営する店で、毎日手づくりのドーナツを提供し、正午に店を閉めている。そのため、古くなってしまったドーナツが売られるようなことはない。

サンタモニカのDK’sドーナツ。オーナーのメイリー・タオさんとショーン・タオさんはカンボジア系2世だ(PHOTOGRAPH BY THEO STROOMER)

30年前にオープンしたドーナツ・シティーは、1979年に南カリフォルニアに移住したカンボジア人夫婦ジョン・チャーンさんとステラ・チャーンさんが営む。コミュニティにとても愛されている店で、ステラさんが病気になったときには、ジョンさんがそばにいられるよう、毎日、地元の人々が早い時間に商品を買い占めた。ドーナツが良い食べ物である証拠だ。

アカデミー賞の授賞式後にPRキャンペーンを行うため、トレホズ・ドーナツの商品を買い込む女性(PHOTOGRAPH BY THEO STROOMER)

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