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白河桃子 すごい働き方革命

望まぬ転勤廃止で新卒応募10倍に AIG損保の決断 AIG損害保険 福冨一成執行役員(上)

2019/7/3

全社員に「どこで働きたいか」を聞くアンケートからプロジェクトは始まった

白河 どういう議論から、ここまで斬新な施策につながったのですか?

福冨 私どもは過去の踏襲として何の疑いもなく「キャリアパスのため」や「顧客との癒着防止のため」といった理由で転勤を受け入れてきましたが、果たしてそれは本当にそうなのか。まったくゼロに立ち戻って、「転勤がないという前提で社員を配置したらどうなるだろう?」と発想を変え、1年かけてパイロットプランを走らせて検証することにしたのです。

白河 「常識を疑え」ですね。1年も検証期間を取った点に本気度を感じますね。具体的にどのような方法をとられたのでしょう。

福冨 まず、全社員に「どこで働きたいか」を聞くアンケートを取りました。その情報を基に、1000人規模の関西エリアを人員配置の検証対象として、(関西地区以外で勤務中で)「関西に戻りたい人」と(関西地区に勤務中で)「関西を出たい人」をそれぞれ把握した上で、双方を入れ替えていく試みを始めてみました。やってみると、意外にうまく交換が進みそうだという感触をつかむことができ、本格的な制度に踏み切ったという経緯になります。

■「モバイル社員」と「ノンモバイル社員」の2つに

白河 素晴らしいですね。しかし、全国規模となると拠点は約200カ所あると聞いています。うまく配置が進むかどうか、これからが正念場ですね。

福冨 おっしゃるとおり、拠点運営の維持は会社として必須ですし、そもそも希望勤務地がない社員もいるので、多様な価値観に応える制度設計にこだわりました。大きな枠組みとしては、全国転勤してもいいと手を挙げる「モバイル社員」と、どうしても希望勤務地で働きたいという「ノンモバイル社員」の2つに分けました。社員には約束としては、「19年4月の配置スタートから21年9月末までの2年6カ月かけて、ノンモバイル社員全員を希望エリアへ配属する」と伝えています。

白河 たしかに、「若いうちはいろんな土地で働きたい」という人もいますしね。個人の違いはもちろん、年齢やライフステージによって希望は変化しそうです。アンケートを取ってみた結果、モバイル社員とノンモバイル社員の比率はいかがでしたか?

福冨 25:75でノンモバイル社員のほうが多数派でした。

白河 かなり多いですね。これは意外ではなかったですか?

福冨 意外には感じませんでした。というのは、ここ数年、転勤の内示を伝えた時に、断らないまでも「今は困るので先延ばししてほしい」とか「なんとかならないか」と交渉が続くケースが頻発していて、転勤に対して消極的な社員が増えている肌感覚はつかんでいました。

白河 「会社の内示だからしょうがないよね」と諦めて受け入れていた時代とはまったく変わってきましたね。共働きが増えている背景も影響していると思うのですが、転勤を渋る理由として「妻が仕事を辞められないので」といった声もありましたか。

福冨 ありましたね。他社に配偶者がいる当社の女性社員の中にも、「夫が転勤になりましたが、ついていきません」という方が出始めています。今の時代に合った働き方の見直しが、当社だけでなく社会全体で進めないといけないと感じます。

白河 厚生労働省が17年に発表した転勤に関する検討会の報告書では、「従業員の個々の事情に配慮しなさい」というメッセージが強調されていました。それだけ、これまでの日本の企業文化では、個人の事情が軽視されてきたのだということですよね。私も会社員時代に海外赴任から戻ってきた男性にすぐにまた転勤の辞令が出て「病気の家族がいるので会社辞めます」と去っていかれたんです。昭和でしたね……「サラリーマンって、自分で住む場所も選べないの」と衝撃を受けた記憶があります。

福冨 今は子育てや介護といった問題が待ったなしで拡大化していますので、物理的に転勤が不可能という人が増えています。会社もできるだけ早く対応しなければ、離職リスクを高めるだけだと考えています。

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