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家事育児NGの「イクジなし夫」 企業からも冷たい目

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NIKKEI STYLE

男性に家事・育児の参加を求める声が急速に高まっている。自民党の国会議員らは男性の育児休業義務化を求める議員連盟を立ち上げ、法制化に動き出した。女性に偏る負担を軽減し、少子化に歯止めをかける狙いだ。家事・育児にかかわらない「イクジなし夫」は、なにも家庭内の問題にとどまらない。ワーキングマザーが思うように仕事に打ち込めず、職場の女性活躍を阻むことに。企業も女性社員の夫対策に乗り出した。

夫に向けた社長からの手紙

「このたびは、お子さまのご誕生、誠におめでとうございます」

出産した女性社員宅にSCSKが送る手紙はこんな書き出しで始まる。ただ、手紙の目的は単なるお祝いではなく、後段に隠れている。

「大切なお子様の成長を支えることと、仕事を通して有意義なご経験を積んでいただくことの両立は、必ずしも容易なことではありません。当社としては最大限の支援をして参りますので、ご家族の皆様におかれましても、これまで以上のご協力を頂戴できればと存じます」

「家族」と表現をぼかしているが、差出人である谷原徹社長が「これまで以上のご協力」を求める本命は、女性社員の夫。妻が子育てとキャリアを両立できるようにしっかり支えてほしい。そんなメッセージを伝えるのが手紙の狙いだ。

同社の両立支援は充実している。育児休業は通算3年まで分割取得でき、子どもが小学生のうちは短時間勤務を続けられる。職場復帰に備え保育所に入れる地域に引っ越したら、転居費用を50万円まで補助する。子育て支援に手厚い企業を国が認定する制度では最上位の「プラチナくるみん」に輝いている。すべては出産・子育てを経ても、女性社員に活躍してほしいとの思いから生まれた。

ところが、制度をどんなに拡充しても難攻不落な壁があった。女性社員の夫だ。

「育休や短時間勤務を取るのも、急病などで保育所から呼び出し連絡が入るのも、ほぼ妻。就労意欲が高い女性が増え、『仕事で頑張りたい』と口にする。だけど本人の頑張りだけでは解決できない。夫に家事・育児を相応に担ってもらわなくては」。ダイバーシティ推進課長の酒井裕美さんは強調する。

どうすれば夫にもっと関わってもらえるか? 長らく悩んだ末、2017年に手紙を郵送し始めた。「社員の夫とはいえ、社外の人。『そこまでするのか』と消極的な意見もあった。効果も測定できない。でも、会社が妻の活躍にどれだけ期待しているかというメッセージが夫に届けば、継続的に妻をサポートしてくれると信じている」

妻の家事・育児の時間は夫の5倍以上

男性が外で働き、女性が家庭を守る。そんな性別役割分担は昔のものとなり、共働き世帯が主流になって久しいのに、いまだ家事・育児分担で夫婦の偏りは著しい。女性の育休取得率が82.2%に対し、男性はわずか6.16%(18年度雇用均等基本調査=速報版)。政府は20年までに男性の育休取得率を13%に引き上げると目標を掲げるが、道のりは遠い。6歳未満の子どもを持つ夫婦の1日当たりの家事・育児関連時間でみても、妻7時間34分に比べ夫は1時間23分と5倍以上の開きがある。世界の中でも夫婦格差は際立っている。

家事・育児に無関心なイクジなし夫は企業の女性活躍推進にも暗い影を落とす。家庭と職場の両方で活躍を求められても、妻はパンクしてしまう。女性活躍に熱心な企業ほど夫にもアプローチするのだが……。

産前産後休業・育休から復帰する社員を対象に、復職後の家事・育児分担、キャリアプランを考えてもらうセミナーを開く第一生命保険。主人公は復職する社員だが、15年から他社に勤務する夫にも参加を呼びかけている。「仕事と子育ての両立態勢をどう整えるか。パートナーの役割についてもセミナーでは伝える。夫婦でしっかり情報共有できていないと分担はできない」。ダイバーシティ&インクルージョン推進室長の井口早苗さんは力を込める。

でも、会社の思いはなかなか夫に届かない。セミナーが平日開催で参加しづらい面もあるが、過去5回で出席した社外勤務の夫はわずか3人。「家事・育児をチームで担えば妻は仕事でチャレンジできるし、もっと頑張れる」と夫の意識改革に期待を寄せる。

男性の育休義務化に向けた議員連盟が発足

こうした実情を打開しようと6月5日、自民党有志議員が「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」を立ち上げた。詳細は今後検討するが、出産間もない時期に1カ月程度の育休を男性社員に取らせるよう、企業に義務付ける案が浮上している。

育休を取りたくても職場に遠慮して実現しない男性の背中を押せるほか、家事・育児を夫に習慣づけるきっかけにもなる。出産直後、精神的に不安定になりがちな妻をサポートもできる。発起人の一人、和田義明・衆院議員は「批判覚悟で義務化を掲げた。社会に根付いた意識を変えるには大胆な施策が必要」と話す。議連からの提言を受け取った安倍晋三首相は「重く受け止める」と応じており、育児・介護休業法などが改正される可能性もでてきた。

事態が進み始めたとはいえ、理想と現実のギャップはまだ大きい。強引に義務付けても職場は混乱するばかり。企業には知恵が必要になる。

18年9月に「男性育休完全取得」を宣言した積水ハウスは、男性社員に子どもが3歳になるまでに育休を1カ月以上取るように迫っている。19年5月末までに約1500人の対象のうち914人が取得済みか、取得中。急速に制度利用が進んだ背景を探ると、入念な準備と万全な支援体制が浮かび上がる。

まず、休業中の給与の補償だ。育休中は通常無給で、替わりに雇用保険から休業給付金が休業前賃金の67%支払われる。これでは収入減に直面するため、当初の1カ月は有給とし、休業前賃金を補償するようにした。ボーナスの査定や昇進・昇格の評価でも、休業中の空白が一切影響しないように人事制度を改めた。

業務の引き継ぎを見える化する「取得計画書」も導入した。担当業務をすべて棚卸ししたうえで、直属の管理職と相談し、どの業務を誰に引き継ぐかを明記する。職場内で対応しきれなければ管理職が部署を越えて協力を依頼する。それでも難航しそうなら担当役員が仲介する。

3つ目の工夫として、「家族ミーティングシート」の作成がある。育休中、何もせずゴロ寝をしていては妻の負担がむしろ増す。どんな家事・育児を担うのかを家族で話し合い、役割を具体的にシートに記入。妻による評価と感想も休業明けに会社に提出する。

「男性育休完全取得」は仲井嘉浩社長が18年5月に発案した。「売り上げが落ちる」「本人が休みたがらない」「妻が専業主婦なので必要ない」など反対意見も挙がる中で、3カ月間、現場のヒアリングを重ねて対策をじっくり練った。8月には全管理職を対象にフォーラムを開催し、仲井社長自らが「家族との絆が強くなるだけでなく、家事・育児経験は顧客への提案力向上にもつながる」などと経営上の利点を説き、管理職に意識改革を迫った。

職場の協力を得られない義務化はモチベーション下げる

同社の伊藤みどり執行役員は「助け合う職場風土も整えず、取りやすい工夫も考えないままに、ただ『取れ』と命じても軋轢(あつれき)が生じる。職場の協力を得られない義務化は取得者本人も同僚もモチベーションが下がるだけだ」とみる。

6月上旬の平日夜、東京都内で開かれたイベント「育休後カフェ なぜいまだに育休後は働きにくいのか?」。参加した約20人は「男女の役割分担」と「男性の育休」の2つのテーマで意見を交わした。

「経営層は長時間働いて出世してきた人なので育休男性を評価しない」

「前例がないので将来キャリアが描けず男性は育休を取りづらい」

「家事・育児は女性の役割と考えて夫に任せようとしない妻もいる」

収入減少や職場での将来キャリアの不安、長時間労働を前提とした職場風土、男性の家事・育児スキルの低さ、経営層・管理職の無理解……。1時間ほどの議論で課題が次々と挙がった。そして、これらすべてが男性の育休義務化で解決するわけでは、ない。

内閣府の15年度「少子化社会に関する国際意識調査」によると、育休を「取りたかった」男性は30%に上り、実際の取得率との乖離(かいり)は大きい。育児・介護休業法は育休を雇用者の権利だと定めている。今でも男女にかかわらず誰でも取得できるはず。取りたい希望がかなわない職場環境は早急に改善すべきだろう。

同時に、調査した欧州3カ国(フランス42%、スウェーデン77.1%、英国57.8%)と比べると、取りたいと考える男性が少ない点も見逃せない。「(パートナーに)取ってほしかった」とする女性の回答も日本は19.8%で、フランス、スウェーデン、英国を大きく下回る。日本はまだ男女ともに意識改革が必要な段階。男性の育休義務化という劇薬を使うのは時期尚早といえる。

少子高齢化が深刻な日本では、働き手を確保するためにも共働き型社会への再構築は必須だ。雇用慣行や学校教育のあり方、個々の意識など克服すべき課題は山積する。一つ一つの課題を丁寧に、しかし迅速に取り除く努力をしないと、イクジなし夫をイクメンには変えられない。

(編集委員 石塚由紀夫)

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