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AVフラッシュ

最後の再生機でMD試聴 平成生まれが感じた懐かしさ 「年の差30」最新AV機器探訪

2019/7/22

小沼 では、スピッツの『インディゴ地平線』にします。……うわー、1曲目から懐かしさが!!

小原 完全に懐古モードになってますね……(笑)。

わくわくしながらMDを挿入する小沼、それを笑いながら見ている小原さん

■録音メディアとしての価値を再認識

小沼 このまま最後まで聴きたいところですが、次に進みましょう。このMDはCDから録音したものですが、やはり録音物はオリジナルに比べて音は劣化するのでしょうか?

小原 多少は落ちるかもしれませんが、このMDを聴いても決して音が悪いという印象はありませんね。最後に、私の持っているMDで比較してみましょう。これはマドンナの「ray of light」というアルバムに収録されていた「Frozen」という曲を録音したもの。録音元になったCDも手元にあるので、聞き比べてみます。

小原さんの手元にあったマドンナ「ray of light」。LPとCD、そしてそれを録音したMDの3形態があった

小沼 まずはMDですね。これでも十分にハイファイだと感じます。次にCD。これだとどうなるんだろう……あれ、圧倒的にCDのほうが音が良く感じる! 曲の奥行き感がまったく違います。

小原 気づきましたか。実はこれ、ティアックとは別のプレーヤーで再生しているんですよ。

小沼 まさか、そのプレーヤーが良いから音が良く聞こえるというオチですか?

小原 その通り! これはドイツのメーカー「T+A」の「PDP3000HV」という、250万円くらいのオーディオプレーヤーです。

小沼 ティアックのMD-70CDは6万円ほどなので、それを比べるのは酷ですよ(笑)。でも、MD-70CDでMDを聴くのでも十分高音質なのに、それをはるかに上回ってハイファイに聴こえるとは……。AV機器の青天井ぶりに改めて驚かされますね。

小原 気を取り直して、MD-70CDでCDを聴いてみましょうか。……うん、少し音が落ちたように聞こえますが、気になるほどではないですね。MD-70CDもよくできているなあ。

小沼 僕には違いがわからないですね。小原さんのスタジオで、大音量で聴いてこれなのだから、日常的に使うぶんにはまったく気にならないでしょうね。

小原 最後は少し脱線したけれど、今回の試聴はMDの音質のポテンシャルを感じる結果でした。これだけしっかりとした音で再生できるメディアにもかかわらず、もう再生機器の生産も終わりに近づいていて、やがてなくなっていってしまう……。そのことには、やはり寂しさを感じますね。

◇ ◇ ◇

再生機器がなくなろうとしていることで、その役目を終えつつあるMD。小原さんのスタジオで聴いたことで、その音質的なポテンシャルを改めて感じることができた。一方で、MDはガジェットとしても楽しさがある。今回、たまたま現在も再生できるMDウォークマン「MZ-E3」を入手したので、小沼が通勤時に使ってみた。

ソニーのMDウォークマン「MZ-E3」。さすがに今、電車でこれを使っているとまわりから不思議そうな目で見られた

まず、サブスクリプションのようにいつでも膨大なライブラリから好きな音楽が聴けるわけではないことに、かえって新鮮さを覚えた。MDを選んで再生すると、曲をスキップしたり、シャッフル再生したりすることはできても、MDを取り換えるのはスマートフォンで音楽を聴いている時のようにはいかない。しかし、無尽蔵に曲を変えられないぶん、吟味して選び、集中して聴くようになった。これはカセットテープと同様だ。

音質も、普段聴いているApple Musicよりも良いように感じる。Charaの「やさしい気持ち」で聞き比べたが、Apple Musicのほうがすっきりして聞こえ、MDののほうが鳴っている音がふくよかという印象だった。

移動中の電車や街中で使っていると、周囲から好奇の目で見られることも(笑)。MDを使っていた世代からは懐かしく、まったく使ったことがない世代からは新しいものに感じられるのだろう。生産が終了しており、プレーヤーも手に入りにくいことを考えると難しいのかもしれないが、インフルエンサーが取り上げるなどのきっかけがあればブームになりそうだと感じた。

かつて一世を風靡したMDだからこそ、この幕引きは寂しいもの。MD世代の一人としては、令和の時代にもう一度ブームが来てほしいのだけど。

小原由夫
1964年生まれのオーディオ・ビジュアル評論家。自宅の30畳の視聴室に200インチのスクリーンを設置する一方で、6000枚以上のレコードを所持、アナログオーディオ再生にもこだわる。最近のヘビーローテーションは『Another Time,Another Place』(ジェニファー・ウォーンズ)。
小沼理
1992年生まれのライター・編集者。最近はSpotifyのプレイリストで新しい音楽を探し、Apple Musicで気に入ったアーティストを聴く二刀流。最近のヘビーローテーションは『めぐる』(優河)。

(文 小沼理=かみゆ、写真 加藤康)

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