「出世して取締役」の勘違い おかしな日本の企業統治カルビー元会長 松本晃氏

僕が出したもう一つの条件が、コーポレートガバナンスの体制をしっかりと整えさせてほしいということでした。「それができなければ僕はやりません」と言ったんです。カルビーの前にいたジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、ガバナンスが非常にしっかりしていました。

カルビー時代、記者の質問に答える松本晃氏

米国の会社のやり方が、何でもいいとは言いません。ただ、資本主義の下で株式会社を経営するのにガバナンスは当たり前です。それなのに日本のほとんどの会社は、あまりやっていない。外から日本の会社を見ながら、「いったい何をやっているんだ」とずっと思っていました。

取締役、誰の「代表」か

株式会社には株主がいます。大企業になればなるほど、その数も多い。その株主一人ひとりが経営に直接口をはさみ始めたら、経営者はお手上げです。たとえて言うなら、1億2000万人の日本人が首相官邸に押し寄せて陳情するようなものです。それでは国も対処のしようがありません。だから選挙で国民の代表を決めるんです。そうして選ばれた代表、つまり国会議員が、国民に代わって政府に物申す所が国会というわけです。

会社も一緒です。株主全員にはとても対応できないので株主の代表を決めます。その代表が取締役です。ですから取締役の仕事は、株主を代表して会社に物申すことです。株主総会で取締役を選任するのは、単なる手続きではないんです。

ところが日本では、経営の執行役と取締役会が一体化してしまっている。これはガバナンスの点では明らかにおかしいんです。だから僕は、カルビーで「本来のガバナンスをやります」と念押しし、松尾家の了承を得たわけです。その結果、当時の「役員」には、仕事に専念するために執行役員になってもらい、取締役は辞めてもらいました。代わりに社外取締役を大幅に増やしたんです。

取締役と執行役では、どちらが偉いと思いますか。会社のかじを取る、ビジネスを進めるという意味では、執行役の方がはるかに偉いんです。取締役は、名前の通り取り締まる役、お目付け役です。場合によっては、会社のやり方に異議を唱え、改めさせる力を発揮するし、株主に対する重い責任も負っていますが、実際に会社を動かすのは執行役なんです。日本では長く、取締役のことを重役と呼んできました。だからサラリーマンは出世して取締役になるのが偉いと勘違いしてしまった。当たり前のことがわからなくなるんだから、不思議ですよね。

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社外取締役、選んだのは「うるさい人」
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