不動産の相談 なぜ顧客と業者の話はかみ合わないのか不動産コンサルタント 田中歩

賃貸マンションの建築であれば、賃料の下落や減価償却、借入金の返済などを踏まえた最終の手取りから見たとき、借入額はどの程度ならば許容範囲なのか、賃貸マンション建築のリスクとリターンとほかの投資のそれとの比較で、賃貸マンションの建築に妥当性はあるのかどうか、借り入れは相続対策との関係でどの程度効果的なのかといった相談も多くなっています。

デメリットなどを踏まえた相談は不得手

こうした中、筆者がよく耳にするのは「どこに相談しても納得できる回答がなかなか得られなかった」という声です。相談に行っても、各社が得意とするサービスに誘導されがちなのがその理由です。

例えば、遊休地を売るか、そこに賃貸アパートを建てるかで悩んでいるとすれば、売買仲介会社は売却を勧め、建築会社はアパート建築を勧めるのが一般的で、結局、どちらがよいか判断がつかなくなってしまうのです。

自らが販売する商品やサービスについては各社とも当然ながら自信をもって推奨しますし、そのメリットについては十二分に語ることができるでしょう。しかし、自社商品やサービスのデメリットや、自社が不得意な商品やサービスと比較しながら、消費者側の事情と背景を踏まえたとき、何がベストかということをともに考えていくのは得手ではないのかもしれません。

自分なりの判断軸を持つ

こうなると、中立的なアドバイザーがいない場合、各社には自社商品やサービスを売りたいというバイアスがかかっていることを踏まえつつ、複数社から提案を受けたうえで自ら選ぶ方針を決めるしかなさそうです。しかし、どの会社も自社商品やサービスを選んでもらうようベストを尽くします。その時、どうやって判断すべきなのでしょうか。

コラム「家は買うべきか、借りるべきか 定番議論に欠けた視点」でも述べましたが、経済合理性以外の判断軸を自分なりに整理したうえで相談をすることが大事だと筆者は考えています。投資理論や税法などを駆使して数字で合理性を検証し、方針を決めることは不可能ではありません。しかし、人は経済合理性だけで方針を決められるものではないと筆者は考えています。

自分の求める生き方や暮らし方という軸、例えば、自分と家族や親族、子供たちの幸せとは何で、どうやって実現したいのか。賃貸物件オーナーならば、借りる人や地域の人々の幸せをどう実現したいかといったことが、不思議と最後の決め手になるものです。

こうした判断軸を持つと自信を持って決断できますし、将来、その決断について後悔することは極めて少なくなると思います。

田中歩
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。
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