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金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」

「老後資金は公的年金だけでは約2000万円不足」――そう指摘した金融庁の報告書が物議を醸し、事実上の撤回に追い込まれた。ネット上や一部メディアでは「年金は100年安心なはずじゃなかったのか」「安心して暮らせるだけの年金を払ってほしい」との批判が高まる。だが、批判してばかりでは不安は高まる一方だ。個人としてできることはないのか。『まだ間に合う! 50代からの老後のお金のつくり方』を20日刊行したファイナンシャルプランナー(FP)の深田晶恵氏に話を聞いた。

◇   ◇   ◇

お金の専門家である深田氏は、「そもそも日本の年金制度は、現役時代の収入を100%保障する設計ではない。年金で足りない分は老後資金を取り崩す、というのが今も昔も変わらぬ現実だ」と指摘する。

一方、今と昔で大きく変わったのが、現役世代を取り巻く経済環境の厳しさだ。右肩上がりの収入が期待できなくなった上、超低金利で預貯金だけではお金は増やせない。晩婚化・晩産化で50代以降も重い教育費負担や住宅ローン返済を抱えているケースも少なくない。

「ためにくい環境」を生きている50代

1990年代半ばからFPとして活動し、4000件以上の家計相談を受けてきた深田氏は、「近年、超低金利や教育費の高騰といった複合的な要因によって、定年のゴールが見えてきたのに老後資金がためられていない世帯が急速に増えている」と話す。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、世帯主が50代の世帯で「貯蓄ゼロ」の割合は2004年の8.1%から16年は14.8%と7ポイント近く増えた。貯蓄事情が厳しくなっているのは全世代共通だが、「老後」が目前に迫っている50代ほど、その現実が重くのしかかる。

深田氏の最新刊『まだ間に合う! 50代からの老後のお金のつくり方』は、現在52歳の著者が、老後資金づくりに着手できていない同世代に向けて著した、50代からの資産形成の指南書だ。

著者の指摘で興味深いのは、今の50代に老後資金をためられていない人が多いのには、「個々人の責任だけに帰すことができない、社会的・経済的な要因がある」と分析しているところ。その一つが「手取り収入の減少」だ。

手取り収入とは、額面収入から所得税・住民税、年金保険料・健康保険料などを差し引いた金額のこと。著者は2003年から毎年1月に「今年の手取り年収」を試算することを16年間続けている。それによると、額面年収700万円のケースでは、02年時点で587万円だった手取りが、17年時点は537万円まで減少(18年、19年はほぼ横ばい)。何とこの15年間で50万円も減っているという。つまり、同じ700万円を稼いでも、今と15年前とでは年50万円、貯蓄余力に差がついていることになる。

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