平成生まれのMD 再生機は生産終了間近、部品も…「年の差30」最新AV機器探訪

小原 じゃあちょっと説明しましょう。MDが92年にはじめて製品化されたのは、先ほどもあった通り。カセットに代わる次世代の録音メディアとして、ソニーが開発しました。当時は松下電器産業(現パナソニック)がオランダのフィリップスと共同開発したDCC(デジタル・コンパクト・カセット)というメディアも同時期に発表しており、どちらが覇権を握るか注目されていました。

小沼 DCCは聞いたことないですね。どんなメディアなんですか。

小原 DCCはカセットテープとほぼ同じ形のメディアにデジタル音源を磁気録音するもの。カセットとの互換性が高く、DCCデッキはカセットテープが再生できました。一方、MDはご存じの通りランダムアクセスで、テープよりも頭出しや追加録音が容易。シャッフル再生や曲順の入れ替えもできました。結果的にはその使い勝手の良さが評価され、MDが普及していったんです。

小沼 Apple MusicとSpotify、AWAなどが争っているのと近いものを感じますね。どの時代も多くのユーザーを獲得することが何より重要なんだなあ。小原さんは、MDの登場時、もうAV評論家だったんですか?

小原 そうです。だから雑誌等ではDCCとMDの比較もやりましたよ。圧縮音源ということで、僕はMDには最初はあまり良い印象はありませんでした。その中で音をどう良くしていくかを各社が努力して、次第に高音質のプレーヤーが作られていったんです。ソニーの「MDS-JA50ES」(1996年発売当時、税別18万円)というデッキは特に良い音でしたよ。うちの倉庫を探せばまだあるんじゃないかな。

加藤 あと、MDは車の中で聴いていた印象があります。

小原 90年代のカーオーディオには必ずMD用のドライブがついていましたよね。僕もマイカーにソニーのMDを乗せていましたから。

高音質で録音できることをうたうMDも登場した。写真は小原さんの私物MD

録音媒体として地位を築くも

加藤 それだけ一世を風靡したMDですが、2000年代に入ると、MDの何十倍もの楽曲を記録できて、パソコンさえあれば扱いも簡単なiPodをはじめとするデジタルオーディオプレーヤーに取って代わられることになります。

小沼 僕もMDを使っていたのは高校1年生くらいまでです。iPodのほうが便利だし、新しくて格好いいしで、乗り換えてしまいましたね。正直、ここ数年、カセットテープは何本か買いましたが、MDを触ったことはありませんでした。

小原 今、カセットテープは録音するためではなく、CDやアナログレコードと同じ音楽タイトルとして人気じゃないですか。実はMDも登場した当時は音楽タイトルも発売していたんです。

小沼 え、そうなんですか。全然知りませんでした。MDはレンタルしたCDをダビングして聴く録音媒体という印象が強いんですが。

小原 ソニーがMDを売り出した時の広告には、確かマライア・キャリーが使われていて、彼女のアルバムが収録されたミュージックMDも発売されていたはずです。他にもいろいろ発売されていたんですよ。

小沼 ミュージックMDがたくさん発売され続けていれば、カセットテープのように人気が再燃する可能性もあったのかもしれませんね。

加藤 もう一つはマーケットでしょう。MDのマーケットは日本が中心で、あとはヨーロッパの一部で使われていた程度でした。これがカセットテープのように世界的に流通していれば、事情はまた違っていたのかなとも思います。

現在販売されている唯一のMDデッキ「MD-70CD」と3人(左から小原由夫さん、加藤丈和さん、小沼理さん)

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日常的に見かけることはなくなったMDだが、今でも使い続ける根強いユーザーのために、ティアックは今でもMDプレーヤーを生産し続けている。しかし、それができるのもあと数年。長く使っていなかった自分が言える立場ではないかもしれないが、近い将来再生できなくなってしまうということに寂しさを覚えた。

しばらく聞いていないが、MDの音はどんなものなのか。次回「最後の再生機でMD試聴 平成生まれが感じた懐かしさ」では以前、記事「音作りにこだわり 最新カセットテープを聴いてみた」でカセットテープを再生した小原さんのリスニングルームに、ティアックのMD-70CDを持ち込んで、令和の今、MDの実力を再確認してみる。

小原由夫
1964年生まれのオーディオ・ビジュアル評論家。自宅の30畳の視聴室に200インチのスクリーンを設置する一方で、6000枚以上のレコードを所持、アナログオーディオ再生にもこだわる。最初に購入した携帯音楽プレーヤーはソニーの「ウォークマンII(WM-2)」。
小沼理
1992年生まれのライター・編集者。最近はSpotifyのプレイリストで新しい音楽を探し、Apple Musicで気に入ったアーティストを聴く二刀流。最初に購入した携帯音楽プレーヤーはシャープの「MD-ST700」。

(文 小沼理=かみゆ)