苦手上司は情報提供で手なずけよ 管理職も毎日が不安『ダメ上司のトリセツ』 関下昌代氏

時間軸をずらしてみるのも効果が大きい。一般的に大企業であれば、上司はそう長く同じポストにとどまっていないものだ。2年程度での異動はざらで、部下のほうが他部署に出る場合もある。両方の異動タイミング次第では、1年で離れることもあり得る。仕事人生が40年間ほどもあると思えば、そのうちの20分の1(同じ部署に2年間在籍する場合)、すなわち5%にすぎない。しかも、勤め先で顔を合わせる時間帯だけのつきあいだ。「つらい時期は永遠に続くように思えてしまうものだが、2年程度だと考えれば、自分を追い込まずに済む」(関下氏)

究極の「ずらし」は転職だろう。そりの合わない上司とあたるたびに転職していては、キャリアを育てにくくなるが、「最後の手段として、頭の片隅に置いておく意味はある」と、関下氏はいう。「いざとなったら、転職すればいい」と、逃げ場を確保しておくことによって、気持ちを楽にできるからだ。上司個人の問題ではなく、その上役も、さらにトップまでも似たような思考法であり、もはや社風となっている場合は、転職が現実的な意味を持ってくる。

「自分1人で抱え込まない」というのは、上司につぶされてしまわないために、関下氏が重視する点だ。「まじめな人ほど、自分のせいにしてしまい、他人に話すのをためらってしまいがち。同期でも家族でも友だちでも構わないから、本音を打ち明けて、知恵を借りたい。自分だけの思い込みで、事態を悪くしているケースは珍しくない」。気持ちが落ち込んでしまい、相談すらできなくなる前に動くのが大事だという。

上司による「情報の遮断」にも対策はある

上司にありがちな振る舞いに関して予備知識があれば、対策を講じる余地が生まれる。たとえば、「情報の遮断」も上司が使う手のひとつだ。部下に社内の重要情報を渡さず、秘密を独占することによって、自分を大きく見せ、部下の依存心を引き出す。しかし、社内に複数の情報チャンネルを持っていれば、孤立は避けられる。「社内で仲間をつくるのは、自分の部署が置かれた状況をチェックするうえでも価値が大きい」。できれば、キャリア形成の面で教えを請うことができるメンター(優れた助言者・導き手)も獲得したい。

時として上司は絶対君主のように映るかもしれないが、多くの場合、中間管理職にすぎない。成果を求められ、評価が下がれば、立場を失う。だから、過剰に偶像視するには及ばない。関下氏はサークルや社内イベントなどを通じて、上層部や大先輩とつながるアプローチをアドバイスする。上司の立場を相対化できるのに加え、有利なキャリア形成に向けて、大所高所からの助言をもらえる。上司の知見には限りがあるが、上層部やベテランの見方はずっと参考になることが多い。

円滑な関係を上司と築くうえでは、上司の出世をサポートするぐらいのつもりで接するのがいいと、関下氏はいう。「上司の成功が回り回って、自分やチームにも恩恵をもたらすようなイメージで働けば、『やらされ感』を背負い込まずに済む」。上司は大抵、ずっと年齢が上だ。時間的な成長余地は部下より小さい。「自分のほうが伸びしろが大きいと考えて、上司の立場を絶対視しない態度は、働きぶりを伸びやかにしてくれる」という。

不機嫌そうな上司の顔を見て、「きょうの役員会で何か言われたのか」とか、「そう言えば、息子さんの受験が近かったな」などと、不機嫌の理由を想像できるようになれば、上司のハンドリング策も思い浮かびそうだ。上司の姿が専制君主ではなく、「気苦労の絶えない中間管理職」「悩めるパパ」などと、人間性が見えてくるだろう。「いずれは自分もその立場になると思って、今のうちから見習いシミュレーションのつもりで知見を聞き出すのは、人生で得がたい情報を手に入れるチャンスになる」(関下氏)。上司は敵でも鬼でもなく、「やがての自分」なのだから。

関下昌代
著作家、キャリアカウンセラー。住友信託銀行、テレビ熊本、熊本県庁などでの勤務を経て、1989年にシティバンク銀行へ入行。2001年から人事部人材開発部門アシスタント・バイスプレジデントとなり、20年間にわたって勤務。11年からいくつかの大学の非常勤講師を務める。著書に『伸びる女(ひと)と伸び悩む女の習慣』『伸びる女の社内政治力』など。

ダメ上司のトリセツ ―働く女子必読! 会社で地雷を踏まないために

著者 : 関下 昌代
出版 : さくら舎
価格 : 1,512円 (税込み)

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