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苦手上司は情報提供で手なずけよ 管理職も毎日が不安 『ダメ上司のトリセツ』 関下昌代氏

2019/6/26

■「理想の上司」はいない

一方、部下の側は新入社員の場合、「教えてもらいたい」「育ててほしい」という希望を抱いているケースが多いそうだ。しかし、部下を育てることが最重要ミッションだと考える上司はそう多くないのが実情だ。売上高のような数値目標を重視して、チームには成果を求める。結果を出せなかった部下には、励ましよりも先に、問い詰めてしまいやすくなる。「管理職」の意識が邪魔して、伸ばすよりは指導するという態度に出がちだ。部下との視線はすれ違う。

「部下の側は上司をハンドリングするような感覚で臨みたい」と助言する関下昌代氏

きつくしかられた経験が少なく、年長者と接したこともあまりない人の場合、上司から怒られてしまうと、強く動揺してしまいやすいのだという。上司を立派な存在だと思い込んでいると、なおさらショックが大きくなる。上司を勝手に「フェアで有能で好人物」と思い込んでいると、「裏切られた」という思いが募る。だが、主に業務実績で昇進するケースが多く、部下育成の経験が豊富なわけでもない上司に、部下の側が過大な期待を抱くのは、意識のずれを広げるだけだろう。

だから、関下氏は「全部、だめ上司だと思っていたほうがよい。『理想の上司』みたいなイメージをふくらませると、かえって自分を責める結果になりかねない」と、上司像の補正を勧める。最初から「カルチャーが異なる」と分かっていれば、批判を受けても、圧力を受け流しやすくなる。「上司の意見は『正論』ではなく、単なる上司の都合と、引いてとらえるのが、心理的なダメージを避けるうえで効果的なかわし方だ」と関下氏。上司という「生き物」だと位置づけて、心理的な距離を置くと、落ち込みを防ぎやすいという。

居酒屋ではしばしば、上司の悪口を語り合って、憂さを晴らす人たちを見かける。適度な「ガス抜き」は意味があるだろう。だが、「そもそもあり得べき上司像とのギャップに腹を立ててもばからしい。部下とは別の動機やロジックで動いている上司に、部下と同じ意識を期待するのはやや筋違い」(関下氏)。部下側の美意識にあてはめて、上司を評価するのも、溝を深くするだけで、仕事上の効果は乏しいとみる。「生理的に嫌い」と、上司を全否定する部下もいるようだが、「余計な美意識を持ち込むのは、お互いにとって不幸。仕事上の間柄だと、クールに切り分けたい」(関下氏)

■自分の置かれた立場から離れる視点

最も避けたいのは、理不尽な上司に正面から立ち向かってしまい、精神的に追い込まれてしまう事態だ。評価や業績のダウンにとどまらず、体調を崩してしまいかねない。関下氏が勧めるのは、視点や居場所の「ずらし」だ。いったん自分の置かれた立場から離れて、時間と空間の枠組みを広げてみる。営業1課に属しているなら、営業セクション全体へ、さらに全社へ、業界全体へと目を向けてみる。「俯瞰(ふかん)して見れば、対立の構図が小さく感じられ、直属の上司だけとのいさかいが空疎に思えるはず」と、関下氏はいう。

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