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知花くらら 苦しんだ20代、短歌が救ってくれた

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NIKKEI STYLE

知花くららさん(37)の処女歌集、『はじまりは、恋』(KADOKAWA)が6月28日に発売となった。ミス・ユニバース2006世界大会(第55回大会)で総合第2位に輝き、モデルとして、女優として、そして国連世界食糧計画(WFP)日本大使として活躍する知花さんは、聡明(そうめい)で美しく健康的なイメージがある。しかし20代の頃は、求められる姿と本来の自分自身とのギャップに苦しみ、摂食障害も経験した。そんな知花さんにとって、短歌との出合いは30代をしなやかに生き抜き、来るべき40代へ備えるための大きな岐路になっているようだ。『第63回角川短歌賞』で佳作を受賞するなど、歌人としても評価の高い彼女は、どのような思いで短歌を詠んだのだろうか。

苦しんだ20代を経て出合った短歌にはどろっどろの感情も

知花さんと短歌の出合いは6年前のこと。細胞生物学者でもある永田和宏さんが永田さんの妻であり歌人の河野裕子さんと交わした歌集『たとへば君 四十年の恋歌』を贈られたことがきっかけだった。口語で詠まれる現代短歌の魅力に引き寄せられ、知花さんは自らも短歌を詠むように。

「始めてすぐに手放しで『これだ! 楽しい!』という感覚を得ました。歌を詠むときには、肩書も社会的な目線も気にしなくていい。そう感じる場所があることが、本当に私にとっては大事だったんだなと思います」

処女歌集『はじまりは、恋』に収められた短歌は、数々の恋のこと、ルーツである沖縄のこと、国際貢献活動で見てきた社会問題、そして家族のことなど、30代の一人の女性の熱くあふれ出る思いがそこかしこに感じられるものばかりだ。

「何かテーマを設けて詠もうと決めているわけではなく、ふと心に留まったものを歌にしてきました。どの歌も、不思議と湿度が高いと言われますが、31文字という字数で表現するために、自分の心の中をより掘り下げなければならず、それが表れた結果かもしれませんね」

読むことで自分の心の中の何か、気づいていなかったものが出てくるということはあるのだろうか。

「どろっどろとしたものが出てきます(笑)。良くも悪くもさらっときれいにまとめられないところが短歌の魅力でもあると思っています。生き方も丸見えだと思います。今回の歌集は、これまでの詩歌をおよそ時系列に並べていますので、私の人生でどんなライフイベントが起こったのか、読んだ方には分かっていただける内容ではないでしょうか」

印象的なのは、心身ともに崩れ行く様も、包み隠さず表現しているところだ。知花さんは、健康的で美しいというパブリックイメージがあるが、20代は世間が求める自分と実際の自分のギャップに悩み、摂食障害にも陥った。

「20代は苦しみました。こうあらねばならない、求められている自分はこうだというものを勝手に自分に課していたのでしょう。自分の中に全くないものではなかったので続けられたものの、だんだんと自分の中でかみ合わなくなってきてしまって。一時期はちょっと変だなと自分で思ってはいたものの、食べては吐いてということを繰り返していて。それが摂食障害と分かったときに初めて、自分が限界だったんだなと気付きました」

知花さんは、責任感が強い。その責任感ゆえに20代は苦しんだが、短歌との出合いが、知花さんの人生を変えたことは間違いないという。

「20代はミス・ユニバースとしての活動もありましたし、モデルとして、女優としてなど『やらなければならないこと』が目の前に列をなしている状態でした。だから30代に入ってすぐに短歌に出合った時に、こんなに自由になれる場所があるんだと、開放された気持ちになりました」

ルーツである沖縄についても初めて歌で向き合った

ちょうど30代に入り、できることが増える中で、自信がついてくる時期でもあった。

「30歳に差し掛かるころから20代のころのようなつまずいた感覚が薄れ、少しずつラクになっていった感じがありました。それまでは理想の自分と現実の自分のギャップをどう埋めるかに必死でした。それが例えば、現場で求められることを自分の中で咀嚼(そしゃく)できて表現できるようになるなど、小さなところからですが経験が追い付き、できることも増え、段々ラクになっていったんです」

同時に、アウトプットしてばかりではなく、インプットしたいという気持ちもわいてきた。

「ミス・ユニバース以降の忙殺される波が引き、少し自分のペースになったことで、空いた時間にひたすらインプットをしていましたね」

そうして得た時間で生まれてきた短歌はしかし、インパクトの強いものが多く、中には苦しい恋の様子が描かれていて、「これは掲載していいのだろうか?」と思うものも。

「初出時の女性雑誌の編集者さんにも言われましたが、それが私にはすごく不思議で(笑)。私にとっては創作物でもありますし、中には『SMの趣味があるのかと思われてしまうけれど大丈夫ですか』といったご意見をいただく歌もありますが、歌はイメージしていただいてこそなので、そう受け止める方がいらしてもいいかと思っています(笑)」

一方で国際貢献活動への取り組みなど、知花さんの使命感の強さを感じさせる作品もある。「ナイルパーチの鱗」には、それが特徴的に表されている。

・あの晩のあなたの匂ひのするシーツ洗へずにゐる夜10時
・この世界で波は計算できないとふ言つてやりたいあなたもよつて
・包丁でしやばらしやばらと削がれゆくあなたが触れた背中の鱗
・シュガーローフの丘にはビルが建ち並ぶ傷あとおほふかさぶたのごとく
・こめかみに刺さる視線 錆びたねぢをばらまいたやうな難民キャンプ
・ちかごろは子どもみたいに笑ふねとビールを飲みほすゆふぐれの母

(「ナイルパーチの鱗」も収められた『はじまりは、恋』より)

「国連の歌を詠むことは私にとってはずっと課題で難しく、今も苦しみます。大使として活動し始めてから12年がたちますので、あれもこれも伝えたい、正確に伝えたいという気持ちがあります。ところがそれで歌を作るとただのスローガンになってしまうんです。だからこそ大使の視点ではなく、知花くらら、一女性として景色がどう見えているかを大切に、現地の歌を詠んでいきたいと思っています」

ルーツである沖縄についても、歌にしている。特別に表現したいと思ったことはあったのだろうか。

「処女歌集にまとめる際に、師匠や編集者さんとも沖縄の歌は外せないかもしれないという話をしていました。ただ、今の状況や過去に起きたことを考えすぎると、歌ではなくなってしまう。沖縄のことを詠んでいる時点で、距離感を感じられたくはない……そんなふうに悩んでいたら、歌人の穂村弘さんに『あまり考えすぎないでお父さんのこととか家族のこととかを、歌ってみたらいいじゃない』と言われて、ふっと気が抜けて作り始められるようになりました。その結果、少しずつ沖縄の歴史が出てきたという感覚です」

自然にルーツが表れたものの、今も難しさは感じていると知花さんは言う。

ところで、処女短歌集を出版したことで今後の仕事へのスタンスは何か変わってきたのだろうか。

「処女歌集でようやく歌人デビューを果たした、スタートが切れたというのが本音です。もっと精進しなければと強く感じています。お芝居もモデルも、自分のできることを今まで通り続けていきたいと思っていますが、ただ楽しいことはやっていきたいんです。楽しいと思えることは、自分にとっての『正解』なのではないかと感じていて、だから常に、夢中になれること、ものを見つけていきたいと思っています」

何と最近、通信教育で芸術大学に入学、「建築を学んでいるんです」と知花さん。

「美しいものはたくさんあるし、人生をかけても世界中のきれいなものを見切れないですよね。どんどん、挑戦していきたいと思います」

これまでのキャリアを生かしながら新しいことは常に、「新しい」「楽しい」のアンテナは常に張っていきたいという知花さん。興味のあるものより義務感があるものからやっていく女性が多い中、知花さんは楽しいをキャッチする能力にたけているが、では40歳に向けて、どんな心構えでいるのだろうか。

「まさに40歳になる前に、勉強したいということもあって、学び舎に戻ったのですが、越えてからはどんな出会いがあるかまだ分かりませんので……。ただお芝居に関しては子どもを産んだらまた違う役もいただけるかもしれませんし、モデルとしても違う形になるかもしれませんし、先が予想できないお仕事だからこそ、楽しいと思える面もあります。挑戦している感じが合っているのかもしれませんね」

とはいえこれは違うかな? と思ったら「そっと後ずさりして扉を閉めるという選択もします(笑)。それも全然ありだと思っているので」

一人でいる時間も大切にし、バランスを取りながら表現を続けている知花さん。母となり、新たな歌が生まれるのも楽しみにしていたい。

知花くらら
1982年3月27日生まれ。沖縄県出身。2006年ミス・ユニバース世界大会で準グランプリを獲得。女性ファッション誌でモデルを務めるほか、TV・ラジオ・CMに出演。NHK大河ドラマ「花燃ゆ」で女優デビュー。07年から始めた国連世界食糧計画(WFP)の活動は今年12年目を迎える。現在も国連WFP日本大使としてアフリカやアジアなど食糧難の地域への現地視察を行い、日本国内で積極的に現地の声を伝える活動を行っている。13年に独学で短歌を始め、17年には「ナイルパーチの鱗」で第63回角川短歌賞佳作を受賞。18年には永田和宏氏との共著「あなたと短歌」を刊行。現在も雑誌や新聞で短歌エッセーを連載中。

ドレス/ゴート(Goat) ヴァルカナイズ・ロンドン 03-5464-5255

(文 山田真弓、写真 厚地健太郎、スタイリング 田中雅美、ヘアメーク 重見幸江)

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