新体操の日本代表チーム「フェアリージャパン」主将としてロンドン五輪で活躍した田中琴乃さん(27)は引退後、ポーラに入社して日本代表の美容コーチを務めた。同社を退社した現在も「フェアリージャパンPOLAアンバサダー」として、メーク開発を手掛ける田中さんに、アスリートと企業とをつなぎながらどのように新体操を盛り上げていくのかを聞いた。
――メークの開発を手掛けるようになったきっかけを教えてください。
「女性はメークがうまくいくとか、きれいな肌でいられることが、自信につながります。選手時代から、そのことは強く感じていました。試合前にドキドキして、心臓がとれてしまいそうになっても、メーク直しのために、コンパクトの小さな鏡を見ながら、赤いリップを塗るときは自分ひとりの世界になれる時間です」
「試合直前の練習で失敗していても、鏡の中の自分を見つめながら『いやいや、これだけ練習してきたじゃないか』と言い聞かせながら、リップを塗ると、不安だった自分に自信がわいて、落ち着くことができます。メークやスキンケアに力をもらったなと感じます。それはアスリートだけではないはず。女性にはデートの前とか、仕事でのプレゼンの前とか、ここぞというタイミングがたくさんありますから。それで引退後、(日本代表チームを協賛する)ポーラに入社して美容コーチの仕事をするようになりました」
3カ月に1回、選手の肌を診断

――美容コーチはどんな仕事をするのですか。
「1年に1回、大きな大会の前に(日本代表チームに)メークを提案します。3カ月に1回、選手の肌を診断して、化粧水や乳液なども選手に届けます。海外と日本では生活環境が違いますから、きれいな肌を保つためのサポートもします。2014年の入社1年目から美容コーチを務めさせてもらいました」
――美容のサポートについて、選手時代には気づかなかったことはありますか。
「選手のときは、すべて美容コーチがやってくれていると思っていましたが、入社後、美容研究室や宣伝部で仕事をして、それが違うと分かりました。選手専用品は研究室の研究員とも手をとりあって、密着度などを工夫しながら崩れにくいメークを開発しています。多くの人手と時間がかかっていることを知りました。美容コーチだけでなく、その裏側で支えている人たちの努力を選手に伝えることが、自分のやるべきことだと感じました」
――17年にポーラを退社後、アンバサダーという形でポーラと契約して、日本代表をサポートすることになります。どんな経緯だったのですか。
「日本代表として戦ってきた経験を子供たちに伝えてほしいという依頼をいただき、学校で講演することがあり、東京五輪・パラリンピックが近づき、もっと関わっていきたいという気持ちが強くなりました。平日に講演するときは、有給休暇を取得して講演活動を続けていたのですが、依頼が増え、お断りすることもあって、悩みました。平日でも動けるようにと考え、今の形に落ち着きました」