「アテンション」から「わた定」へ 女性ドラマ50年

2000年代半ばに連続ドラマの勢力図に変化が起きた。ドラマといえば、フジテレビとTBSの2強だったが、日本テレビが割って入るようになったのだ。原動力となったのが、水曜夜10時のドラマの枠である。通称「水10」だ。1995年の「星の金貨」や2002年の「ごくせん」など、度々ヒット作を生み出すことはあったが、フジの「月9」やTBSの「金ドラ」のように、枠にお客が定着するまでには至らなかった。アラサーに着目した「anego[アネゴ]」(2005年)を皮切りに、働く女性をターゲットにするようになり、枠での視聴率が安定した。

ハイスペックな女性が、かえって結婚を難しくする新たな問題点を浮き彫りにした(C)TBS

2007年には派遣社員をテーマにした「ハケンの品格」がスタート。非正規雇用労働者への不当な扱いが社会問題となる中で、ピンチを乗り越える主人公の姿に、お茶の間は拍手喝采だった。

2000年代中盤の女性の「お仕事」ドラマは、「アラサー」や「ハケン」がキーワードとなり、晩婚化や非正規雇用の拡大といった時代を反映したものだった。そこに、一人の代弁者が登場する。天海祐希だ。「アラフォー」なる流行語を生んだ、2008年のドラマ「Around40~注文の多いオンナたち~」で演じた精神科医は、患者だけでなく同僚医師や看護師からの信頼も厚く、プライベートでも頼りにされるアネゴ肌。しかし、自身の恋愛に関しては、からきしダメで、趣味は高級旅館に泊まって、独りでお笑いのビデオを見ること。同世代の女性たちの抱える悩みや願望を代弁した。

■ハイスペックが婚活の障害に

さて、ここからは記憶にも新しい、比較的最近のドラマになる。時代感としては、もはや今とあまり変わりないだろう。

「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」(2016年)では、美人・高学歴・高収入のハイスペックな女性が、かえって結婚を難しくする現代女性の抱える新たな問題点を浮き彫りにした。

また、それとは逆に、これまで日陰の存在と思われていた雑誌社の「校閲」という仕事に光を当てた「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(2016年)では、場面転換の度に、身に着けるファッションが紹介され、そこには自身の内面の輝きをファッションに応用させようとする、女性の新たな働き方の提案があった。

法医解剖医をテーマにした「アンナチュラル」(2018年)では、職場でのお茶出しや雑務はヒマな者が自主的に行うため、多くは上司が担当し、部署として意思決定をする際も、独断で決めることはなく、メンバー個々の意見を必ず聞くという働き方がここでは実現していた。

16年間の主婦経験が決して無駄にならず、それも含めてヒロインのキャリアとしてストーリーに組み込まれていた(C)TBS

■女性ならではの働き方とは

今年放映された「グッドワイフ」は、米国の人気ドラマのリメイクだが、そこには女性の社会進出で一日の長にあるアメリカ社会の思想が見事に反映されていた。検事である夫が逮捕されたことを受け、家族を養うために16年ぶりに弁護士に復帰する設定は、現場から遠ざかっていた普通の主婦が、第一線に社会復帰する、今らしさが表現されていた。

ドラマは時代の鏡といわれるように、ドラマの中には、社会が求める理想のヒロイン像が描かれる。それは、「わたし、定時で帰ります。」も同様だ。そこでの働き方は、決してドラマオリジナルの荒唐無稽な発想ではない。お茶の間が潜在的に求めたものなのだ。さて、次なるヒロインのお仕事ドラマは、僕らに何を教えてくれるだろうか。

指南役
草場滋 しなんやく・くさばしげる メディアプランナー エンターテインメント企画集団「指南役」代表。テレビ番組の企画原案、映画の原作協力、雑誌連載の監修などメディアを横断して活動中。

[plusparavi(プラスパラビ) 2019年5月5日からの連載記事を再構成]

エンタメ!連載記事一覧
エンタメ!連載記事一覧