「『茂造』の初登場は95年ごろ、私が演じる年老いた博士と山田花子さんによる孫の話でした。手塚治虫先生の漫画キャラ『お茶の水博士』をモチーフにしたものでしたが、登場時のかつらは今のようなちゃんとしたものじゃありませんでした。97年に『超!よしもと新喜劇』と題したテレビ放送で東京に出たものの、大阪ならではの新喜劇を演じられず、1年ほどで大阪に戻されました」

「上沼恵美子さん、やしきたかじんさんの番組に呼んでいただき幸い、仕事には困りませんでした。たかじんさんからは『茂造、オモロイから大切にせいや』と背中を押していただき、会社には『集客、テレビの視聴率など結果を出します』と訴えて人気を定着させることができました。『茂造』って、ハチャメチャだから、そばにいたら鬱陶(うっとう)しいけど、いないと寂しい、みたいなキャラなんです」

辻本さんは座長を勇退した今、ベテラン座員として次期座長候補のリーダー(清水けんじさん、吉田裕さん、信濃岳夫さん、諸見里大介さん)らの芝居にも出演する。
「THE舶来寄席」のリハーサルを終えてあいさつする辻本茂雄さん(大阪市のなんばグランド花月) (C)吉本興業

「座長のときは責任を負っているから、座員に『こうしろ』と厳しく指導してきました。ベテラン座員として参加する今は経験に基づいて『こうしたら面白くなるで』とアドバイスしています。自分の役割をわきまえ、居場所を確保することが大切です。会社勤めの経験はありませんが、新喜劇という組織も同じかもしれません」

「少し前から勇退の話が出ていたので、昨年から半年程度かけて、自分が座長を務める芝居に出てくれる後輩の平山昌雄君、森田展義君、もじゃ吉田君、レイチェル君らには芝居中『アドリブ祭り』と称した無茶ぶりで鍛えていました。対応する彼らもきつかったと思いますが、登場時にお客様の拍手が増えたのでよかったと思います」

座長は勇退したものの、「茂造」を主役にした特別公演は続ける。

「勇退発表後、大勢のファンの方から泣かれて戸惑いました。『いやいや新喜劇を辞めるんやないですよ』と。『茂造』はキャラが強く、リーダーたちの芝居を食ってしまう可能性があります。リーダーの中では、清水けんじ君が演じる『おしみ婆(ばあ)さん』がお年寄りどうし息ぴったりの芝居ができました」

「座長を退き肩の荷が降りた分、『茂造』シリーズの特別公演に力を入れます。祇園花月(京都市)、御園座(名古屋市)、なんばグランド花月などで続けます。約50分の通常公演は前日約4時間の稽古で本番に臨むのに対して、特別公演は台本作成に数カ月、他の劇団員にも参加してもらって稽古も1カ月ほどかけ、セットチェンジもある大掛かりな芝居です。お客様のノリが良すぎて予定の2時間をオーバーして3時間近くになったこともありました。営業で各地を回る機会も増えるでしょう。泣きもあるし、笑いもある、お客さまを飽きさせない芝居を演じますので、『笑いに来たらどうや!』」

(聞き手は苅谷直政)

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