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ヒットを狙え

地球を救うビール パタゴニアが食品に力を注ぐ理由

日経クロストレンド

2019/7/9

カーンザを原料としたクラフトビール「ロング・ルート・ウィット」。パタゴニアの食品部門「パタゴニア プロビジョンズ」の新作としてデビューした
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「1杯で、地球を救う」という思いを込めた新たなクラフトビールが2019年4月25日、日本に上陸した。白地に山のシルエットを描いた、このビールの名は「Long Root WIT(ロング・ルート・ウィット)」。ベルギー風の白ビールをベースに、パタゴニアの母国である米北西部のアレンジを加えて生み出された。

ロング・ルートは英訳すれば、長い根。人の背丈を軽々と超すほど地中深くまで根を伸ばす、原料のカーンザを言い換えた表現だ。ロング・ルート・ウィットは、オーガニックの小麦、コリアンダーとオレンジピールも加えて醸造。さわやかな味わいながらも、飲みごたえのあるホワイトビールに仕上がった。

カーンザは、最長で3.7メートルまで根を伸ばす多年生の穀物。ロング・ルートという名は、このカーンザにちなんで名付けられた

カーンザを使ったクラフトビールは、パタゴニアが世界で初めて開発し、今回が2作目となる。16年10月に「ロング・ルート・エール」という名の青いロング缶として登場。カーンザ特有の苦みと、グレープフルーツのような柑橘系の味わいが引き立ち、日本でも17年の発売後、クラフトビール好きの間でひとしきり話題となった。

新作の発売に合わせてサイズダウンし、名前も「ロング・ルート・ペールエール(Long Root PALEALE)」に一新。アルコール度数は、ロング・ルート・ペールエールが5.5%、ロング・ルート・ウィットが4.9%。いずれも355ミリリットルで475円(税込み)と、強気の価格だ。

パタゴニアは12年に食品部門「パタゴニア プロビジョンズ」を立ち上げ、食品事業を強化している。オーガニックで環境にやさしい食品ばかりを集めたプライベートブランドで、日本では16年9月から展開を始めた。

魚体を傷つけない漁法で捕獲した天然のスモークサーモン、100%オーガニックのエナジーバー、オーガニックスープに始まり、徐々に品数を拡大。スペイン西部で養殖し、ヨーロッパのオーガニック認証を取得した肉厚のムール貝の缶詰など、常温保存ができ、開ければすぐに食べられるオーガニック版のインスタント食品を提案してきた。

古代穀物やスーパーフードのキヌアなどを加えた「グレインズ」のように、熱湯を注ぎ、10分待てば完成する食品も開発。今回のクラフトビールを含めれば、計17商品に広がった。

パタゴニアの食品は、直営店やオンラインショップを中心に展開してきたが、19年4月には改装オープンした銀座ロフトにも並び始め、少しずつ販路が広がっている。アウトドアメーカーが、なぜ食品事業に挑むのか。なぜ、カーンザという穀物にたどり着いたのか。これまでの歩みを知ることで見えてくる。

■死んだ地球からはビジネスは生まれない

パタゴニアを創業したのは、イヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)氏。1953年、14歳のときに登山を始め、57年から独学でクライミングギアを作り始めた。73年、米カリフォルニア州にパタゴニアを設立し、アパレルの製造を開始。一代で世界的なブランドへと成長させた。

今でこそ「持続可能な開発目標」(SDGs)が世界のトレンドに浮上したが、パタゴニアはその先駆者として、環境と向き合ってきた歴史がある。

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