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地球を救うビール パタゴニアが食品に力を注ぐ理由

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日経クロストレンド

「1杯で、地球を救う」という思いを込めた新たなクラフトビールが2019年4月25日、日本に上陸した。白地に山のシルエットを描いた、このビールの名は「Long Root WIT(ロング・ルート・ウィット)」。ベルギー風の白ビールをベースに、パタゴニアの母国である米北西部のアレンジを加えて生み出された。

ロング・ルートは英訳すれば、長い根。人の背丈を軽々と超すほど地中深くまで根を伸ばす、原料のカーンザを言い換えた表現だ。ロング・ルート・ウィットは、オーガニックの小麦、コリアンダーとオレンジピールも加えて醸造。さわやかな味わいながらも、飲みごたえのあるホワイトビールに仕上がった。

カーンザを使ったクラフトビールは、パタゴニアが世界で初めて開発し、今回が2作目となる。16年10月に「ロング・ルート・エール」という名の青いロング缶として登場。カーンザ特有の苦みと、グレープフルーツのような柑橘系の味わいが引き立ち、日本でも17年の発売後、クラフトビール好きの間でひとしきり話題となった。

新作の発売に合わせてサイズダウンし、名前も「ロング・ルート・ペールエール(Long Root PALEALE)」に一新。アルコール度数は、ロング・ルート・ペールエールが5.5%、ロング・ルート・ウィットが4.9%。いずれも355ミリリットルで475円(税込み)と、強気の価格だ。

パタゴニアは12年に食品部門「パタゴニア プロビジョンズ」を立ち上げ、食品事業を強化している。オーガニックで環境にやさしい食品ばかりを集めたプライベートブランドで、日本では16年9月から展開を始めた。

魚体を傷つけない漁法で捕獲した天然のスモークサーモン、100%オーガニックのエナジーバー、オーガニックスープに始まり、徐々に品数を拡大。スペイン西部で養殖し、ヨーロッパのオーガニック認証を取得した肉厚のムール貝の缶詰など、常温保存ができ、開ければすぐに食べられるオーガニック版のインスタント食品を提案してきた。

古代穀物やスーパーフードのキヌアなどを加えた「グレインズ」のように、熱湯を注ぎ、10分待てば完成する食品も開発。今回のクラフトビールを含めれば、計17商品に広がった。

パタゴニアの食品は、直営店やオンラインショップを中心に展開してきたが、19年4月には改装オープンした銀座ロフトにも並び始め、少しずつ販路が広がっている。アウトドアメーカーが、なぜ食品事業に挑むのか。なぜ、カーンザという穀物にたどり着いたのか。これまでの歩みを知ることで見えてくる。

死んだ地球からはビジネスは生まれない

パタゴニアを創業したのは、イヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)氏。1953年、14歳のときに登山を始め、57年から独学でクライミングギアを作り始めた。73年、米カリフォルニア州にパタゴニアを設立し、アパレルの製造を開始。一代で世界的なブランドへと成長させた。

今でこそ「持続可能な開発目標」(SDGs)が世界のトレンドに浮上したが、パタゴニアはその先駆者として、環境と向き合ってきた歴史がある。

きっかけは88年の春。パタゴニアは米ボストンのニューベリー・ストリートに直営店を構えた。ところが、開店間もなくスタッフが体調不良を訴えた。原因は、地下室に保管していたTシャツ。そこから、ホルムアルデヒドが空気中に放出されていたことが判明した。

それまで、コットンの原料となる綿花は、環境にも人にもいい天然素材だと信じて使っていた。しかし、カリフォルニア州の中央部に広がるサンホアキン・バレー(San Joaquin Valley)の農場に向かうと、衝撃の事実が明らかになった。

「生産農家が毒ガスマスクをして、雑草や害虫を駆除するために農薬を使い、枯葉剤をまいていた。世界中の耕地面積のうち、綿花が占める割合はその当時、1.5%程度だったが、全世界の農薬使用量の実に4分の1が綿花の栽培に充てられていた」とパタゴニア日本支社の辻井隆行氏は振り返る。

「死んだ地球からはビジネスは生まれない」。自然保護運動家のデビッド・ブラウアー氏のこの言葉に共鳴し、パタゴニアは、すべてのコットン製品を、化学肥料も殺虫剤も枯葉剤も使わない、100%有機栽培の「オーガニックコットン」に切り替えた。93年には、リサイクルされたペットボトルを原料に、フリースを製造。その後、紡績工場から回収した製造廃棄物もナイロン繊維に再生して使い始めた。

パタゴニアは、アパレルの世界に大きな変革をもたらしたが、それでもシュイナード氏の目には、世界の環境危機を救うには不十分だと映った。だからこそ、パタゴニア プロビジョンズという食品事業を立ち上げたのだ。

特に問題視したのは、利益や効率を追い求める工業型の農業が全世界で広がっていること。人口が増え、経済成長が進むにつれ、農薬や化石燃料を使う農業が主流となり、土壌中の生物多様性が失われ、温室効果ガスが急増した。「もはや二酸化炭素(CO2)を出さないだけでは不十分。土壌を回復することから始めないといけない」(辻井氏)。切迫した危機感が、パタゴニアを食品事業へと駆り立てた。

「パタゴニア プロビジョンズとは、食品のあり方、つくられ方をもう一度見直し、自然環境をもう一度再生させていこうという試み。土壌を健康にし、野生生物を保護しながら、食品をつくることによって、食品そのものが、環境問題を解決する一部になれる。私たちはそうなるべきだと考えている」と、日本支社で同事業を担う近藤勝宏マネージャーは力を込める。

環境再生型農業で地球を救う

近藤氏いわく、土壌はもともと「炭素の倉庫」とも言われる場所だった。しかし、工業型の農業が広がり、多くの炭素が地中から外に出て行った。化石燃料に依存した農業から、炭素を土へ戻す有機農業へ。農業を変えることで、壊れた食物連鎖の修復を目指すという。より多くの炭素を土の中に戻し、固定するには、地中に微生物や有機物を増やす必要がある。そして、たどり着いたのが、環境再生型有機農業だった。

通常の有機農業と異なるのは、土を耕さずに栽培することにある。耕すことによって、土の中がかき混ぜられ、固定された炭素が逃げてしまうからだ。「世界中の耕作用地が、環境再生型有機農業に置き換われば、ヒトが自発的に出すCO2を、100%土の中に閉じ込めておくことができる」と近藤氏は説く。そして、土を耕さずとも大きく育つ穀物として、パタゴニアが見出した「最終兵器」が、カーンザだったのだ。

カーンザは農薬を一切使わず、小麦よりも少ない水で育つ。そして、何度収穫しても、雑草のように生え続ける特徴がある。収穫しても地中に根が残るため、光合成で生み出された炭素を土の中に固定し、有機物を増やす効果が期待できる。

カーンザの作付面積を増やせば増やすほど、土が再生し、生態系の回復も進んでいく。だからこそ、パタゴニアは、このカーンザを使った商品化を思い立ち、クラフトビールを世に出した。

しかし、環境にやさしくとも、味に秀でていないと、消費者から選ばれない。そこで、パタゴニアは、クラフトビールの聖地として知られる米ポートランドのホップワークス・アーバン・ブルワリー(Hopworks Urban Brewery、通称HUB)と手を組んだ。

HUBは07年に創業し、持続可能なビジネスをたたえる「Bコーポレーション」という認証制度を、米西海岸のブルワリーで初めて取得した。再生可能エネルギーを使い、環境を守りながら、世界品質のビールを醸し続ける、このブルワリーとの出合いが、世界初の"環境再生型ビール"を生んだ。

パタゴニア プロビジョンズのゴールは、最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑えること、そしてビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行することにある。

パタゴニア全体に占める食品事業の割合は「まだごくわずか」(近藤氏)。世界の食品問題を立ちどころに解決するのは難しいが、一杯のビールから行動を起こすことで、パタゴニアは世界を本気で変えていこうとしている。

(日経クロストレンド 酒井大輔)

[日経クロストレンド 2019年6月11日の記事を再構成]

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