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ヒットを狙え

地球を救うビール パタゴニアが食品に力を注ぐ理由

日経クロストレンド

2019/7/9

「パタゴニア プロビジョンズとは、食品のあり方、つくられ方をもう一度見直し、自然環境をもう一度再生させていこうという試み。土壌を健康にし、野生生物を保護しながら、食品をつくることによって、食品そのものが、環境問題を解決する一部になれる。私たちはそうなるべきだと考えている」と、日本支社で同事業を担う近藤勝宏マネージャーは力を込める。

■環境再生型農業で地球を救う

近藤氏いわく、土壌はもともと「炭素の倉庫」とも言われる場所だった。しかし、工業型の農業が広がり、多くの炭素が地中から外に出て行った。化石燃料に依存した農業から、炭素を土へ戻す有機農業へ。農業を変えることで、壊れた食物連鎖の修復を目指すという。より多くの炭素を土の中に戻し、固定するには、地中に微生物や有機物を増やす必要がある。そして、たどり着いたのが、環境再生型有機農業だった。

パタゴニア プロビジョンズを担当する近藤勝宏マネージャー

通常の有機農業と異なるのは、土を耕さずに栽培することにある。耕すことによって、土の中がかき混ぜられ、固定された炭素が逃げてしまうからだ。「世界中の耕作用地が、環境再生型有機農業に置き換われば、ヒトが自発的に出すCO2を、100%土の中に閉じ込めておくことができる」と近藤氏は説く。そして、土を耕さずとも大きく育つ穀物として、パタゴニアが見出した「最終兵器」が、カーンザだったのだ。

カーンザは農薬を一切使わず、小麦よりも少ない水で育つ。そして、何度収穫しても、雑草のように生え続ける特徴がある。収穫しても地中に根が残るため、光合成で生み出された炭素を土の中に固定し、有機物を増やす効果が期待できる。

カーンザの作付面積を増やせば増やすほど、土が再生し、生態系の回復も進んでいく。だからこそ、パタゴニアは、このカーンザを使った商品化を思い立ち、クラフトビールを世に出した。

しかし、環境にやさしくとも、味に秀でていないと、消費者から選ばれない。そこで、パタゴニアは、クラフトビールの聖地として知られる米ポートランドのホップワークス・アーバン・ブルワリー(Hopworks Urban Brewery、通称HUB)と手を組んだ。

HUBは07年に創業し、持続可能なビジネスをたたえる「Bコーポレーション」という認証制度を、米西海岸のブルワリーで初めて取得した。再生可能エネルギーを使い、環境を守りながら、世界品質のビールを醸し続ける、このブルワリーとの出合いが、世界初の"環境再生型ビール"を生んだ。

パタゴニア プロビジョンズのゴールは、最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑えること、そしてビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行することにある。

パタゴニア全体に占める食品事業の割合は「まだごくわずか」(近藤氏)。世界の食品問題を立ちどころに解決するのは難しいが、一杯のビールから行動を起こすことで、パタゴニアは世界を本気で変えていこうとしている。

パタゴニア日本支社は、東京・神宮前のTRUNK(HOTEL)に1日限定の「パタゴニア プロビジョンズバー」をオープンした
天然サーモンとクリームチーズのカナッペなど、パタゴニア プロビジョンズの食品を並べ、クラフトビールとのペアリングを提案した

(日経クロストレンド 酒井大輔)

[日経クロストレンド 2019年6月11日の記事を再構成]

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