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地球を救うビール パタゴニアが食品に力を注ぐ理由

日経クロストレンド

2019/7/9

きっかけは88年の春。パタゴニアは米ボストンのニューベリー・ストリートに直営店を構えた。ところが、開店間もなくスタッフが体調不良を訴えた。原因は、地下室に保管していたTシャツ。そこから、ホルムアルデヒドが空気中に放出されていたことが判明した。

それまで、コットンの原料となる綿花は、環境にも人にもいい天然素材だと信じて使っていた。しかし、カリフォルニア州の中央部に広がるサンホアキン・バレー(San Joaquin Valley)の農場に向かうと、衝撃の事実が明らかになった。

「生産農家が毒ガスマスクをして、雑草や害虫を駆除するために農薬を使い、枯葉剤をまいていた。世界中の耕地面積のうち、綿花が占める割合はその当時、1.5%程度だったが、全世界の農薬使用量の実に4分の1が綿花の栽培に充てられていた」とパタゴニア日本支社の辻井隆行氏は振り返る。

環境への思いを語るパタゴニア日本支社長の辻井隆行氏

「死んだ地球からはビジネスは生まれない」。自然保護運動家のデビッド・ブラウアー氏のこの言葉に共鳴し、パタゴニアは、すべてのコットン製品を、化学肥料も殺虫剤も枯葉剤も使わない、100%有機栽培の「オーガニックコットン」に切り替えた。93年には、リサイクルされたペットボトルを原料に、フリースを製造。その後、紡績工場から回収した製造廃棄物もナイロン繊維に再生して使い始めた。

パタゴニアは、アパレルの世界に大きな変革をもたらしたが、それでもシュイナード氏の目には、世界の環境危機を救うには不十分だと映った。だからこそ、パタゴニア プロビジョンズという食品事業を立ち上げたのだ。

特に問題視したのは、利益や効率を追い求める工業型の農業が全世界で広がっていること。人口が増え、経済成長が進むにつれ、農薬や化石燃料を使う農業が主流となり、土壌中の生物多様性が失われ、温室効果ガスが急増した。「もはや二酸化炭素(CO2)を出さないだけでは不十分。土壌を回復することから始めないといけない」(辻井氏)。切迫した危機感が、パタゴニアを食品事業へと駆り立てた。

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