SNSで炎上、株価下落の一因に
育児休暇(育休)が満了した直後に会社が地方への転勤を命じるのは、育児をする男性への嫌がらせ、いわゆるパタニティーハラスメント(パタハラ)にあたるのではないかと問題になっています。SNS(交流サイト)に端を発したカネカの育休明け転勤問題は、いわゆる「炎上」状態となり、カネカの株価が下落する一因にまで発展しました。
正確な事実関係はわかりませんが、カネカ元従業員(Aさんといいます)の妻のSNSや日経ビジネス(https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/060300015/?P=1)などネット上の情報を総合すると、おおむね以下のとおりになるかと思います。
カネカ側「対応は適切だった」と主張
カネカは当初、「Aさんが社員かどうかわからない」というスタンスをとっていましたが、一転して6月6日に公式見解を発表しました。
その概要は・転勤の内示は育休に対する見せしめではない・元社員から5月7日に、退職日を5月31日とする退職願が提出され、そのとおり退職した・当社が退職を強制したり、退職日を指定した事実は一切ない・発令から着任までの期間は一般的には1~2週間程度、本件での内示から発令までの期間は4月23日から5月16日までの3週間であり、通常よりも長いなどであり、「元社員の転勤及び退職に関して、当社の対応は適切であった」と結論づけています。
転勤命令、権利の乱用に当たる場合は無効
私は、労働問題に関しては通常、企業側の立場に立つことが多い弁護士です。しかしながら、本件におけるカネカの対応は様々な意味で問題が多いと感じています。
同一法人組織内で、労働者の職種、職務内容、勤務場所を変更する人事異動を配置転換(配転)といい、使用者(企業)は労働者(従業員)に対する指揮命令権の一つとして、配転を命じる権限を有しています(勤務地の変更を伴う配転を特に転勤と呼びます)。
多くの企業では就業規則に「業務上の必要性がある場合には配転を命ずることができる」などの規定が置かれています。この配転命令権については使用者側に広範な裁量が認められていると解されており、転勤を命じられた労働者は原則的にこれを拒否することはできません。