五輪関連グッズに偽造横行か フリマサイトなど注意

2019/7/8

オリパラSelect

警視庁に押収された偽のピンバッジ(6月4日、警視庁麹町署)
警視庁に押収された偽のピンバッジ(6月4日、警視庁麹町署)

2020年東京五輪・パラリンピックまで1年余りになる中、偽グッズの販売を巡る事件が増えている。目立つのは大会のスポンサー企業が広報用に配るノベルティー(記念品)が偽造されるケースだ。ノベルティーは公式グッズのように製造番号を付けるなどの偽造防止対策を施すことが少なく、標的にされている恐れがある。

五輪関連グッズの需要は1千億円規模ともいわれ、警察は不正販売への警戒を強めている。

警視庁は6月、東京五輪のエンブレムを模した偽ピンバッジを販売したなどとして、長野市の古物販売業の男(65)を商標法違反容疑で逮捕した。逮捕容疑は1~3月、フリーマーケットサイトを通じ偽ピンバッジ3個を計2万7600円で販売するなどした疑い。偽ピンバッジは日本航空の社員向けに作られた非売品を模していたという。

男の自宅からはラグビー・ワールドカップ関連のものも含め、30種、約3千個のピンバッジが押収された。男は1個約2千円で海外から仕入れていたとみられ、約2年間で約140万円を稼いでいたという。

大規模イベントでは、スポンサー企業が主催者の了承の下でシンボルマークやキャラクターをあしらったグッズをノベルティーとして製作し、顧客や社員などに配布することが多い。

現在、フリマサイトでは東京五輪のノベルティーが数多く転売され、捜査幹部は「偽物が混じっている可能性が高い」とみている。警視庁が18年に摘発した別の事件でも数百個の偽のノベルティーが押収されている。

東京五輪の公式グッズでは、組織委員会が承認した「公式ライセンス商品」がオフィシャルショップなどで広く販売されている。公式ライセンス商品は偽造防止対策として、見る角度を変えると像が浮かぶホログラムと製造番号が付いた証紙がパッケージに貼られ、消費者も本物と偽物を識別しやすい。

商標に詳しい平野泰弘弁理士によると、企業のノベルティーにはコストなどを理由にこうした偽造防止対策がとられていないことが多いという。平野弁理士は「ノベルティーは偽造しやすいグッズとして狙われている可能性がある」と指摘する。

粗悪な偽造品が高額で流通すれば、企業のイメージダウンにつながる恐れもあり、あるスポンサー企業はフリマサイトのネットパトロールを始めた。パトロールによって社員が複数の偽造品を発見し、組織委や警視庁に通報したという。担当者は「大会の盛り上がりに水を差さないよう偽物には厳しい姿勢で臨みたい」と話す。

みずほ総合研究所は東京五輪の関連グッズの需要は1千億円と試算する。大会が近くなるにつれ、関連グッズの偽造品も横行する恐れがある。偽造品の不正販売対策として警視庁は関連グッズの真贋(しんがん)を判別できる捜査員を増やす方針だ。同庁幹部は「犯罪グループに利益が流れないよう取り締まりを強化する」と話している。

[日本経済新聞夕刊2019年6月17日付]