研究続けるリケジョを増やせ 国立大学、知恵絞る

2019/6/18

東北大は17年度に学内の女性研究者を表彰する制度を始めた。活躍する女性の存在を学内外にアピールし、後に続く女性を呼び込むねらいだ。

九州大は女性限定枠を導入して女性教員を増やした。10年間で837人の応募があり、50人を採用した。ただ、増えたのは人数に限らない。

九州大の研究者が11~15年に出した論文を調べたところ、1人あたりの平均論文数は男性研究者で10本、女性研究者で6本。女性枠で採用された女性研究者に限ると13本と高水準だった。

研究者の世界では、40歳までの実績がその後のキャリアに大きく影響する。女性研究者が出産すると、育児の分研究にあてる時間が少なくなりがち。そこで育児中の女性を支える取り組みを用意した。

女性枠で09年に着任した農学研究院の安尾しのぶ准教授(43)は2歳の娘を育てながら研究を進める。育児中に研究員を雇える九大独自の制度を利用し、育休後の17~18年度は研究補助員を2人雇って書類作りやデータ入力を任せた。自身は研究の組み立てや論文の執筆などに注力、「補助員がいなければ研究どころではなかった」と振り返る。

九州大学の木下准教授

木下博子准教授(34)は現在小学2年生の娘を1歳から小学校入学まで、4歳の息子を生後8週から、いずれも学内の保育園に預けて研究を続けた。息子の出産時は博士研究員(ポスドク)で、「1年更新のポストのため、育休を取得できなかった」。

木下准教授は「同年代の研究者が学会で賞をとったりすると遅れを感じる」と打ち明ける一方で、「学内の環境がなければ、ここまで持ち直せていなかっただろう」と話す。

研究から離れた女性が現場に戻るのを後押しする動きもある。名古屋工業大が14年度に設立した「OG人財バンク」では、OGが研究のデータ整理など経験を生かした補助業務を手がける。子育て中の人も多く、研究に携わるためのリカレント(学び直し)として活用する人も多いという。

OGの補助を受けるのも女性教員が中心だ。教員公募の女性限定枠の導入もあり、13年度に8%だった女性比率(非常勤を含む)は18年度に11.9%まで伸びた。

名工大のダイバーシティ推進センターの担当者は「女性の登用は対外的にも重要だ」と指摘する。「海外の大学から共同研究のパートナーに選ばれるには、研究内容に加え、大学の多様性確保の体制も指標の一つになっている」

研究者の層が厚くなる、指導を受けた学生らのキャリアのお手本になる、女性研究者自身のキャリアが継続することでより多くの業績が見込める――女性の大学教員が増えることの利点は多岐にわたっている。

チャンス奪う「配慮」は不要 ~取材を終えて~

深夜に及ぶ実験や海外で開かれる学会などで、研究者の生活は多忙だ。体力的な負担も無視できない。そんななか、「この仕事は女性にはきついだろう」と、悪意なく候補から女性を外すケースが見られるという。東北大の大隅典子副学長は「無意識のバイアスがある」と批判する。

子育て中の女性研究者がいれば、周囲の配慮や理解は確かに必要になる。ただ、配慮が一方的にチャンスを奪う結果になっては本末転倒だ。配慮すべき事情は個別にある。「女性だから」という理由だけで判断できることは本来ないはずだ。何が本人のためになるのか、一歩踏み込んで考えたい。

(酒井愛美、中島沙由香)