空と地上から撮ったベトナム 美しい風景と人

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/6/23
ナショナルジオグラフィック日本版

中国との国境に近いハザン省のマー・ピー・リャン峠。ベトナム北部を代表する山の風景だ(PHOTOGRAPH BY JUSTIN MOTT)

米国人の写真家ジャスティン・モット氏がベトナムに移住したのは2007年のこと。現地の言葉はまったくわからなかったが、かつて取材でベトナムを訪れた際にこの国に恋をし、ここで仕事をすると決意して移り住んだ。ベトナムにほれ込んだ写真家は、空と地上からベトナムの人や風景を撮ることに挑んだ。

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ハザンを空から。緑の風景と曲がりくねった道(PHOTOGRAPHS BY JUSTIN MOTT)

モット氏はハノイで暮らしながら、カメラを手に「視覚に訴えかけてくる生の」街を歩き回った。新しくできたベトナム人の友人たちが自宅にやって来ては、言葉の壁を乗り越え、行き当たりばったりの撮影旅行に連れ出してくれた。

モット氏は米国の報道写真界の激しい競争の中に身を置いていた過去を振り返り、「私には写真を共有するという概念が欠けていました」と語った。「ベトナムに来ると、写真は共有するものでした」

ハザンを地上から。家畜に与える草を収穫し、娘と一緒に帰るモン族の農家の男性(PHOTOGRAPHS BY JUSTIN MOTT)

モット氏はサンフランシスコでジャーナリズムと写真を学んだ。ベトナムに来てすぐ、自分は歓迎されていると感じた。ベトナム戦争で使用された枯れ葉剤の健康被害について報じるため、モット氏は数年にわたり、公立学校の英語教師で60歳のグエン・キム・トゥイさんを取材。彼女の存在は、モット氏が新しい街での暮らしに慣れるのを助けてくれた。

「彼女にとって、私は米国人の息子のようなものです。はじめは米国人の息子なんて欲しいとも思っていなかったでしょうが」とモット氏は冗談を言った。

フーコック島を空から。コショウの実を乾燥させる(PHOTOGRAPHS BY JUSTIN MOTT)

トゥイさんは教え子たちから「ミセス・トゥイ」と呼ばれている。ミセス・トゥイはモット氏に通訳のクイン・アンさんを紹介した。アンさんは「Q」という愛称を持ち、モット氏の制作会社で働き始めた。2017年、2人は正式に結婚し、ベトナムと米ロードアイランド州で結婚式を挙げた。

商業的なプロジェクトやドキュメンタリープロジェクトのために東南アジア太平洋地域を忙しく飛び回っていたモット氏には、実験的で創造的な仕事をするような余裕がなかった。彼はやりがいのある個人的なプロジェクトを模索し、「ベトナムを肯定的な形で紹介するための」プロジェクトで第二の故郷をたたえることにした。

フーコック島を地上から。コショウの実を防水シートの上に広げる人(PHOTOGRAPHS BY JUSTIN MOTT)

「私はベトナムに感謝しています」とモット氏は話す。「人々は私を自宅に招き入れ、私が彼らの物語を伝えることを許してくれました」

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