17年ぶりに復活した新型「トヨタ・スープラ」が、ついに日本の道を走りだす。BMWとの提携をはじめとする新たな試みから生まれた5代目は、どんなクルマに仕上がっているのか? 全3グレードの走りを報告する。
こだわりの「1.55」
ベンチマークはポルシェ718ボクスター/ケイマン。その目標のために両社で新しいプラットフォーム(車台)を開発し、BMWはオープンモデルの新型「Z4」をつくった。一方、トヨタは「直列6気筒のFR」をDNAに刻むスポーツカーを17年ぶりに復活させた。それが新型スープラである。

共同開発といっても、車両設計はBMW。3リッター6気筒/2リッター4気筒のパワートレインや足まわりなど、動的部品もBMW製。「フルランナー」と呼ばれたプラットフォーム検討試作車は、「BMW 2シリーズ」をベースにつくられた。引き算すると、トヨタが腕を振るったのは、主に外形デザインと車両のチューニングということになるが、それだけに、この新型スポーツカーの果たしてどこまでがトヨタ・スープラなのかという点が、試乗する前の興味のポイントだった。
「単なる数値より、フィールを大切にした」というのが、スープラの開発スローガンだが、そのなかで、最もこだわったのが1.55という数字である。ホイールベース(2470mm)をトレッド(前1595mm/後1590mm)で割った数値だ。可能な限りホイールベースを短くして、可能な限りトレッドを広くする。このホイールベース/トレッド比によって、運動性能の基本は決まるという。
ケイマン、旧型Z4、旧型スープラ、レクサスLFA、フェアレディZ、トヨタ86などがいずれも1.6台であるのに対して、今回の共同開発プラットフォームは飛び抜けた数値を示す。ポルシェ911はこれまで1.60だったが、出来立てほやほやの新型では1.54まで詰めてきた。「この数値にこだわったわれわれの狙いが間違っていなかったことが証明された」。試乗前の技術説明会で開発責任者の多田哲哉さんはそう言った。
意外なほどコンフォート
初の公道試乗会でまず最初に乗ったのは、「SZ-R」(590万円)。最高出力258psの4気筒ターボを積む18インチの中位グレードである。撮影と合わせてひとコマ60分の速攻試乗だ。すぐに走りだして、ホテル敷地内のワインディングロードを下る。


「1.55」の話を聞いた直後だったので、期待は高まった。最近で言えば、アルピーヌA110。最初のひと転がしで軽さと敏捷性に「オッ!」と目を見張らせた、ああいう「新しさ」があるかと思ったが、そこまではなかった。トヨタ86の2倍の剛性値を持つというボディーもニュースだが、ファーストタッチの印象は意外にもコンフォート系である。
乗り心地がいい。SZ-R以上には減衰力可変のアダプティブダンパーが備わる。スポーツカーらしい硬さはもちろんあるが、ズデンとしたアンコ型ではない。むしろバネ下の軽さを感じさせるかろやかな乗り味だ。