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著者に聞く 仕事の風景

部課長は社員選挙 老舗船橋屋は「これでいいのだ」 『Being Management』 渡辺雅司氏

2019/6/19

銀行員時代の逆を行くようなマインドセットが船橋屋の職場にワクワク感をもたらしている。渡辺氏は「ご機嫌な会社にしたい」という。無用のストレスから解き放たれ、気持ちを弾ませるために渡辺氏が提案するのは「べき論」からの離脱だ。「『経営者はこうあるべきだ』『もっと利益を稼がないと』といった理想像にしがみつくと、理想とのずれに思い悩みがち」。逆に、渡辺氏が望ましい経営者像と位置づけるのは「これでいいのだ」と言い放つバカボンのパパだ。

■「自然の理法」に従う

米国流の経営メソッドが広まって、四半期決算を「成績表」と位置づけるような、短期の収益を重んじる「数値経営」が日本にも定着した。「株式時価総額の増大」「収益の確保」が経営者のミッションとして信じ込まれるようになるなか、渡辺氏は「経営者は窮屈な思い込みから解き放たれる必要がある」と説く。松下幸之助も重んじたという「自然の理法」になじまない短期的な稼ぎ方は長期的な企業存続を危うくすると、200年続いてきた老舗の主は力説する。

発酵させたくず餅の上澄み液を使った乳酸菌化粧水のような、本業からの派生商品のアイデアが次々と社内からわいてくる。「イノベーション事業を広げていく際には、企画する本人が面白いと思い、楽しく取り組まないと、盛り上がっていかない。『商品化できそうか、もうかりそうか』といった、ありがちなものさしは邪魔なだけ」(渡辺氏)

「利益をたたき出す人を欲しがっているだけの企業に、優れた人材が集まらなくなっている」と渡辺氏はみる。自分の貴重な人生を他人のもうけを積み上げるために費やすのは嫌だ、と考える人が増えてきたからだという。早くからこうした利益優先主義を遠ざけてきた渡辺氏の考え方が働き手の気持ちをつかんでいる。

「昭和の頃は『とにかくハワイに行きたい』と、ハワイ自体が幸せの目印になっていた。でも、今は『のんびり海を眺めていられれば、ハワイでなくても構わない』と、幸せの中身を重視するように変わってきた。企業も昔のままでは存続できない」と、渡辺氏は考える。「幸せ」を根っこに据えた船橋屋経営の賞味期限はまだまだ日持ちがしそうだ。

渡辺雅司
船橋屋社長 8代目当主。1964年東京都生まれ。立教大学卒業後、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。93年に船橋屋入社。2008年に父の後を継いで8代目当主に。以降、老舗の伝統を守りつつ、様々な組織改革に取り組み、ファン層の拡大に成功。組織改革や人材育成の講演依頼も多い。

Being Management 「リーダー」をやめると、うまくいく。

著者 : 渡辺 雅司
出版 : PHP研究所
価格 : 1,728円 (税込み)

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