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2020年から見える未来

民泊、五輪需要の受け皿ほど遠く 規制厳しく伸び悩み 民泊新法施行から1年

2019/7/5 日本経済新聞 朝刊

この1年で民泊事業の減速が避けられなかった企業もある

空き家・空き室での宿泊サービスを認める住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されてから、1年がたった。インバウンド(訪日外国人)の宿泊需要が高い首都圏でも新法に基づく民泊の利用は低水準のままだ。2020年東京五輪・パラリンピックでの宿泊施設不足を補うと期待されたが、伸び悩んでいる。

観光庁によると、7日時点で東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県では新法の下、6438件の民泊施設がある。古民家再生を手掛けるくらつぐ(神奈川県鎌倉市)もその一つ。1月に19世紀の古民家をリノベーションした「鎌倉古今」を開業した。新法が定める営業上限の年180日は宿泊を受け入れ、それ以外はレストランなどとして営業する。

ただ、同庁によると新法施行の2018年6月15日から19年3月末までの民泊の延べ宿泊者は1都3県で141万人だ。ホテルや旅館など一般宿泊施設の宿泊者の1.5%にすぎない。

民泊に詳しい大和総研の市川拓也主任研究員は「当初よりは伸びているが低い水準で、五輪需要の受け皿にはほど遠い」と指摘する。新法の営業上限に自治体の上乗せ規制もあって「肝心の東京で市場が拡大しきれていない」とする。

新法民泊に参入した企業などは苦戦を強いられている。

「起業から5年で売り上げ100億円の企業にする夢はこの1年で厳しくなった」。民泊ベンチャー、カソク(東京・新宿)の新井恵介社長はほぞをかむ。15年に起業し、インバウンド需要で事業を拡大してきた。新法施行前の管理物件は約700戸と全国有数の規模だったが、新法による届け出が遅れ、損失額は約5億円に及んだという。

この1年、新しいルールに適応するため試行錯誤してきた。その答えが「マンスリーハイブリッド」だ。180日の上限を守りつつ、残りを月決め賃貸住宅として運用する。新法に適合した民泊の管理物件は約400戸まで回復した。それでも新井氏は「こんなはずじゃなかったという悔しい思いもある」と漏らす。

民泊の開業を見送る事業者も出ている。賃貸住宅開発のシマダハウス(東京・渋谷)は3月、東京・神楽坂に空き家を使った一軒家ホテル「神楽坂レトロなホテル」を開業した。当初は新法民泊での開業を目指していたが、担当者は「規制が厳しく使い勝手が悪すぎる」と変更の理由を話す。

民泊は東京から近いなどで宿泊施設があまりなかった首都圏近郊地域でも、宿泊客を呼び込むきっかけになると期待されていた。「日帰り観光客が多い」(埼玉県観光課)という同県でも、民泊は伸び悩んでいる。

同様に新法民泊の少ない千葉市は、大型行事の開催期間に限り観光客を民家に泊める「イベント民泊」に力を入れる。市内では五輪・パラで計7競技が開催され、期間中の宿泊施設不足が懸念されている。ただ、新法民泊が十分あれば、わざわざイベント民泊を展開する必要はないとの指摘もある。熊谷俊人市長は「(市民の中で)民泊への理解が得られていないという声も聞く」と話す。

滞在コストを安く抑えられる民泊は、インバウンドに長期滞在してもらうのに有効だ。空き家対策の一助になることも期待される。違法民泊を排除して地域の住環境を守りつつ、民泊を定着させる取り組みが必要になる。

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