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スペースXの衛星高速ネット 天文観測に多大な影響か

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/6/26

ナショナルジオグラフィック日本版

スペースXの動画中継の1コマ。ファルコン9ロケットがスターリンク衛星を軌道に投入する様子が捉えられている。全世界にインターネットサービスを提供しようとするスペースXの計画にとって、今回の60基は始まりに過ぎない。天文学者たちは、このプロジェクトが科学に及ぼす影響や、一般の人々が見上げる夜空の変化を懸念している(PHOTOGRAPH BY SpaceX)

電気自動車テスラで知られる起業家のイーロン・マスク氏が思い描く通りにことが運べば、近い将来、夜空には新たに約1万2000個の「星」が輝きはじめることになる。

これらの星は、マスク氏の米スペースXが計画する巨大通信衛星網「スターリンク」の人工衛星が反射する光だ。スターリンクは、これまで電波が届かなかったへき地や、航空機、船舶、自動車など、地球上のどんな場所にいても高速ブロードバンドを利用できることを目指している。完成は2020年代中頃としている。

すでに計画は動き出している。2019年5月23日には、スペースXのファルコン9ロケットが60基のスターリンク衛星を軌道に運んだ。配備後、一企業が夜空の見た目を一方的に変えてしまうことは倫理面で問題だという批判の声が上がった。

マスク氏は当初、人工衛星に気付くことなどないはずと請け合っていたが、現在、同社の衛星群の姿は世界各地で観測されている。通信衛星群が私たちの頭上をいつどこで通過するかを計算できるオンライン追跡サービスまで登場した。

天文学者たちは、スペースXの人工衛星が地上からの天体観測に及ぼす影響や、ただでさえ混雑している軌道環境に冷蔵庫サイズの小型人工衛星が配置されることに懸念を表明している。

そこで、スターリンク計画がどんなものなのか、同様のプロジェクトは見慣れた夜空の眺めを台無しにするのかを、整理して考えてみたい。

■マスク氏のスターリンク計画とは?

まずはマスク氏の考えるスターリンク計画をおさらいしてみよう。マスク氏は、高度350kmから1150kmの地球低軌道に、約1万2000基のスターリンク衛星を打ち上げる予定だ。この通信衛星は、クリプトンを燃料とする姿勢制御用ロケットを90分おきに点火して目標の軌道まで上昇してゆく。今後1年で約720基の人工衛星を投入する予定だ。

計画通り通信衛星が軌道上に配備されれば、世界のどこにいても、途切れることのない高速インターネットサービスが利用できるようになるという。

■通信衛星網はどのようにして働くの?

通信衛星の個々の重さは約230キロで、動力は太陽光発電でまかなう。人工衛星同士は光と電波の両方を使って通信する。空が見えるところであれば、地上から通信衛星を経由した高速インターネット通信が可能になる。現在でもイリジウム衛星など、衛星を使った通話や通信サービスはあるが、スターリンクは遅延が生じない高速インターネットサービスを提供可能とするのが特徴だ。

スペースXによると、スターリンク衛星は「軌道上のデブリ(宇宙ゴミ)を追跡し、自律的に衝突を回避することができる」という。さらに、稼働期間を終えた通信衛星は、配置された軌道から離脱し、大気圏に突入する際に部品の95%が燃焼して消えるように設計しているという。

■便利この上ないのに、天文学者が怒る理由とは?

まず、地球低軌道はすでに非常に混み合っている。マスク氏自身も述べているが、地球の近傍には約5000基の人工衛星がひしめいている。ここにさらにスターリンク衛星が加われば、その数は現在の3倍以上になる。また、スターリンクで使われる通信衛星は廃棄時に大気圏によって消滅するように設計されているとするが、損傷して軌道上に残ったまま宇宙ゴミになったり、大気圏に突入しても燃焼しきれなかったりすれば大問題だ。

豪フリンダース大学の研究者アリス・ゴーマン氏は、Twitterに「その高度でも、デブリは長期にわたって軌道にとどまることがある。詳細を明らかにせず、良いことばかり言う人は信用できない」と投稿した。

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