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世界の川侵す抗生物質汚染 耐性菌由来の病死広がる?

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ナショナルジオグラフィック日本版

抗生物質が使われる量は年々増加している。この薬は公衆衛生に驚くべき効果を発揮し、命にかかわる感染症から何百万もの人々を救っている。

しかし、人体で役割を果たした後も、この優れた薬は自然環境に影響を及ぼし続ける。体外に出た抗生物質はそのまま残り続け、薬が効かない「薬剤耐性菌」の進化をうながす可能性があるからだ。

英ヨーク大学の研究者らが、フィンランドで開催された環境毒性学化学会欧州支部の学会で2019年5月27日に発表した最新の研究によると、テムズ川からメコン川、チグリス川など、世界中の91河川を調査したところ、3分の2近くで抗生物質が検出された。

この研究を率いた1人であるヨーク大学の環境化学者アリステア・ボクソール氏は、これは大問題だと話す。「生理活性物質である抗生物質を、私たちの社会は自然環境に大量に排出しています」

その結果、川の生態系だけでなく人の健康までもが、重大な悪影響を被る恐れがあるという。

2050年には感染症が死因のトップに?

薬剤耐性菌に感染すると、ときには治療不可能な場合もある。英国の首席医務官を務めるサリー・デイビス教授は、問題は年を追うごとに深刻化しており、将来は簡単な感染症の治療さえ困難になるような「壊滅的な脅威」をもたらす恐れがあると指摘している。

2016年の報告によれば、薬剤耐性菌に感染して命を落とす人は、全世界で毎年約70万人に上るという。よく使われる抗生物質への耐性菌が増えれば、この数字が跳ね上がるのではないかと専門家らは危惧する。英国政府の委託を受けた2014年の研究では、薬剤耐性菌による感染症が2050年までに世界の死因のトップに躍り出る可能性があると警告した。

そして、抗生物質が自然環境に流出する「抗生物質汚染」は、その耐性菌の出現を加速させる一因となる。さらに、河川や小川の微妙な生態系バランスを崩し、細菌群集の構造を変化させる。

もしそうなれば、生態系のあらゆるプロセスに影響が及ぶ可能性もある、と米ニューヨーク州ミルブルックにあるケーリー生態系研究所の水域生態学者エマ・ロージ氏は話す。川の生態系では多くの細菌が、炭素や窒素といったごく基本的な栄養の循環を助けるなど、重要な役割を果たしているためだ。

ところが、いつ、どこで、どれくらいの抗生物質が自然界に流れ込んでいるのかを、科学者はまだしっかり把握できていない。河川の抗生物質の濃度に関するデータがほとんど、またはまったくない国がたくさんある。そこで、ボクソール氏らは問題の全体像を描き出すことにした。

下水処理場でも完全には取り除けない

ボクソール氏らは世界規模で協力者を募り、近くの川で試料を採取してもらった。その数は、南極を除く全大陸の計72カ国に上った。協力した科学者らは、橋や桟橋からバケツで川の水をくみ、ろ過し、冷凍した試料を英国に送った。

広く使われている14種類の抗生物質が試料に含まれているかどうかを調べたところ、全試料の65%から、少なくとも1種類の抗生物質が検出された。検出されなかった大陸は存在しなかった。

「文字通り、世界規模の問題です」とボクソール氏は言う。

ロージ氏はこの結果について、特に驚きはないと述べている。「日常的に医薬品を使用する人々が住んでいれば、その場所の下流からは確実にその痕跡が見つかります」

抗生物質は体内で分解されないため、余剰分は尿や便と一緒に排泄される。多くの先進国では、排泄物とその中の抗生物質は下水処理場に行く。だが、最先端の設備でさえ、抗生物質を完全に取り除くことはできない。下水処理場のない地域ではなおさら、抗生物質が河川に流れ込みやすい。

得られたデータは予想と一致していた。抗生物質の濃度が高かったのは、川に隣接するごみ捨て場や下水処理場の下流、あるいは汚水が川に直接流れ込む場所だった。

バングラデシュのある川では、皮膚や口の感染症に広く処方されるメトロニダゾールの濃度が、環境中で「安全」とされる限界値を300倍も上回っていた。欧州で2番目に長いドナウ川からは、7種類の抗生物質が検出された。なかでも、気管支炎などの呼吸器感染症の治療に使われるクラリスロマイシンは「安全」なレベルの4倍の濃度だった。

今すぐ対策を始めるべき

「さまざまな点で、プラスチック汚染の問題に似ています」とボクソール氏は話す。「問題は、我々が廃棄物の行方について何も考えていないことです。廃棄物は私たちの手を離れた後も存在し続けます」

ほんのわずかな量の抗生物質でさえ、薬剤耐性菌の出現に大きな影響を与える可能性があると、英エクセター大学の微生物生態学者ウィリアム・ゲイズ氏は言う。細菌は遺伝子のやり取りが得意で、進化のスピードは速い。たとえ抗生物質の濃度が非常に低くても、そうした進化は起きる。ボクソール氏らが世界中の川で確認したような濃度で十分だ。

薬剤耐性の進化がどのように起きるかを正確に理解するには、まだやるべき研究が山積みだとゲイズ氏は強調する。とはいえ、抗生物質が川に流れ込まないようにする対策は、今すぐ始めるべきだという。人の健康に深刻な影響を及ぼす恐れがあるからだ。

「予防原則に従うべきだとはよく言われますが、科学的な証拠が出そろう頃には、もう手遅れになっているかもしれないのです。私たちは抗生物質『後』の時代に突入してしまったのかもしれません。それは、庭のバラで引っかいた傷だけで治療不可能な感染症にかかり、命を落とす時代です」

(文 ALEJANDRA BORUNDA、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年5月31日付]

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