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五輪メダルで注目の「都市鉱山」 一般ゴミも宝の山?

2019/7/4 日経産業新聞

太平洋セメント大船渡工場(岩手県大船渡市)に設けられた実証試験の設備

早稲田大学や太平洋セメントなどが、一般ゴミの焼却灰から金や銀などを回収するリサイクルの研究を進めている。2018年に実証実験を開始し、予想以上に多くの貴金属が回収できることが分かってきた。化学薬品などを使わない環境に悪影響が少ない技術で、資源の有効利用を目指す。

「こんなに多くの金が回収できるとは」。早稲田大学の大和田秀二教授は実証実験の結果に、驚きを隠さない。焼却灰から選別した粒径が2~4ミリメートルの原料に含まれている金の含有率は220PPM(PPMは100万分の1)という高さだったからだ。

金鉱山で鉱石1トンから採れる金の量は平均すると3グラム程度とされ、含有率にすると3PPM。世界で最も高品質の金鉱山のひとつとされる日本の菱刈鉱山(鹿児島県伊佐市)でも1トンあたり30~40グラム程度にとどまる。

携帯電話端末などの電子機器では多いと300PPMほどの金が含まれ、使わなくなった電子機器から金などの貴金属を回収するリサイクルは事業化されている。しかし紙や生ごみなどの一般ゴミを燃やした灰にこれだけ多くの金が含まれているとは予想外だった、というわけだ。金だけでなく銀も1500PPMと高い含有率だった。

大和田教授が東京大や企業と一般ゴミの再資源化の研究会を始めたのは14年。欧州の一部の焼却炉で、焼却灰から金属を回収している例があったからだ。ただ欧州は日本と違って一般ゴミと産業ゴミの区別がなく、有害物質などを含まなければ家電などを粉砕したゴミも一緒に燃やしている。産業ゴミを別に捨てている日本で金属の含有量は少ないのではないかとも考えられた。

しかし研究会に参加していた太平洋セメントが、セメントへ再資源化している焼却灰を分析してみると金だけでなく銅も豊富だった。一般ゴミとして捨てられているおもちゃやリモコンなどに使われている金属が残ったのではないかと考えられるという。「これなら実証試験もいけるのでは、となった」と大和田教授は振り返る。

太平洋セメントは、資源リサイクルを手掛けるエンビプロ・ホールディングス(静岡県富士宮市)やリバーホールディングス(東京・千代田)とも協力。大船渡工場(岩手県大船渡市)に設備を導入して、18年から実証試験を進めた。

実証試験では、まず、25ミリメートル以下の焼却灰をスクリーンというふるいでふるいわけ、さらに風力を使い重量物と軽量物に選別。重量物は粒径ごとに6区分されてからエアテーブルであらためて重量物と軽量物にわけ、さらに磁石につくものとつかないものに選別する。残った磁石につかない焼却灰に多くの金が含まれていた。選別は風力や磁力など物理的な力だけを利用、化学薬品などは使わないので環境への悪影響も抑えられる。

これまで2回の実証運転では多くの金などが含まれていた。また粒径2~4ミリメートルの磁石につかないものに含まれる220PPMという金の量は、回収できる金全体の約90%を占めていた。

とはいえ実証試験に先行する評価では「焼却灰によって含まれる金などの量にばらつきがあった」と太平洋セメント中央研究所の石田泰之第3研究部副部長は説明する。今後、エアテーブルの運転条件や粒径を変えるなどして、さらに効率的に金などを回収する条件をさぐっていく。渦電流を使った選別機を加えることで、回収率や金属の純度が上がるのではないかとの期待もある。

一般ゴミの焼却灰から金などを回収する事業を実現するには、ゴミ焼却炉のしくみを見直すことも重要になる。現在の日本のゴミ焼却炉は、ゴミを焼却した後に灰を冷却するために水を掛けている。このため金属の表面に粘土などが張り付いてしまい、インパクトミルを使ってこの粘土を取り除く作業が必要になる。効率的な金属回収が可能になるよう焼却灰を空気で冷却できないか、焼却炉メーカーと共同で研究に着手した。

廃家電などに含まれる貴金属やレアメタルなどは、「都市鉱山」と呼ばれ注目されている。使わなくなった携帯電話などを回収し、そこに含まれる金銀銅で20年に開催される東京オリンピック・パラリンピックのメダルを作る取り組みも関心を集めた。

とはいえ日本に眠る都市鉱山資源を回収して再利用される割合はまだ高くない。一般ゴミの焼却灰から金などの金属を回収する技術やシステムが確立されれば、眠っている国内資源の有効活用に役立ちそうだ。

(編集委員 小玉祥司)

[日経産業新聞 2019年6月12日付]

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