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chelmico・吉田凜音… 女性ラッパー相次ぎブレイク

日経エンタテインメント!

2019/6/21

2018年末の『NHK紅白歌合戦』に初出場したDAOKO。海外ツアーを積極的に行う、水曜日のカンパネラのコムアイ――。近年、ラップを取り入れた楽曲を歌う女性アーティストが増加。新世代には数多くの女性ラッパーも誕生している。ガールズラップユニットのchelmico(チェルミコ)、女子高生ラッパーとして注目を集める吉田凜音、「高校生RAP選手権」でブレイクした、ちゃんみななどがそうだ。女性ラッパーが音楽シーンの新たな勢力となりつつある。

chelmico 2014年に結成し、18年8月にアルバム『POWER』でメジャーデビュー。パーティーチューンの新曲『switch』を5月10日に配信リリースした

chelmicoは、RIP SLYME好きだった、25歳のRachelと22歳のMamikoで結成。自らつづる等身大の日常をハイスキルなラップに乗せた楽曲が人気だ。18年にメジャーデビューし、三越伊勢丹、日本郵政など、多数のCM曲に採用されている。

ディレクターを担当する山田剛氏によると「RIP SLYMEを聴いている主なリスナーは、HIPHOP大好きっ子というよりも、J‐POPをメインで聴く普通の子たち。chelmicoの2人が子どもだった頃には既に、ラップは当たり前の存在になっていた」と言う。つまり今の若者たちにとってラップは、ロックやR&BのようなJ‐POPとの境界線のない音楽ジャンルに成長。その結果、ラップのリスナー、プレーヤー共に、男女の垣根もなくなっているのだ。今後、chelmicoが目指す先についても山田氏は、「一般的な音楽リスナーの子たちにもちゃんと聴いてもらえるよう、J‐POPのフィールドを主戦場にしていくつもりです」と語る。

■メロディーに制約がない

吉田凜音 2000年12月11日生まれ、北海道出身。独自のファッションセンスとメイクで同世代の女子からも高い共感を集める。最新シングル『#film』は、この春に高校を卒業した彼女が思いをつづった、リアルな卒業ソング

19年春に高校を卒業した吉田凜音は、インディーズで活動していた中学2年生の時に『りんねラップ』をツイッターにアップ。かわいさとカッコよさが共存したラップを、SKY‐HI(AAA・日高光啓)やライムスターの宇多丸らが絶賛、17年にメジャーデビューを果たした。彼女はインディーズ時代に一般的な歌手経験もあったが、現在はラップ曲を中心に歌っている。A&Rを務めるビクターの松田光弘氏は、彼女がよく口にする言葉について、「ラップは歌と違ってメロディーに制約がないため、ダイレクトに心情を乗せられる」と明かす。今の若者にとってラップは、よりリアルな表現ができる手段となっているのだ。

彼女自身ラップを通して自己発信を続けるなかで、「自分の見せ方や、メディア露出といった自己プロデュース能力も上がってきた」(松田氏)と言う。実際彼女は、モデル業や女優業にも積極的で、昨年は人気恋愛リアリティー番組『真冬のオオカミくんには騙されない』(AbemaTV)にも出演。女性ファンが急増した。彼女の現在のキャッチフレーズは、“ミレニアル世代のファッション・アイコン”。そこには音楽界だけでなく、エンタテインメント界でも活躍するという意思が感じられる。

ちゃんみな 1998年生まれ、東京都出身。日本語、韓国語、英語を操る、現在20歳のトリリンガルラッパー。最新シングル『I'm a Pop』では、アメリカの最新ヒップホップサウンドのトラップに挑戦している

現在若者を中心に大人気の、ラップでお互いを攻撃する“MCバトル”で注目を浴びたのが、女性ラッパーの、ちゃんみな。高校生限定の大会である「高校生RAP選手権」で、16年に強烈なキャラクターを放ち、17年にメジャーデビュー。メッセージ性の強い歌詞と、最新のUSヒップホップを意識したサウンド、セクシーかつアグレッシブなパフォーマンスは、海外からも注目を集める。

彼女のラップとの出合いについて、ディレクターの栗田真吾氏は、「小学生の時に、BIGBANGのラッパーG‐DRAGONに衝撃を受けて、自身もリリックを書き始めたそうです。現在世界を席巻するBTS(防弾少年団)など、K‐POPがラップに関して、日本の若者に与えた影響は大きい」と指摘する。今後は、アメリカのヒップホップブームの火付け役となったMTVの伝説的番組『Yo! MTV Raps』のアジア版に、日本人として初出演することが決定。「海外と日本のメジャーシーン両方で活躍できる、女性ラッパーを目指しています」(栗田氏)。

若者を中心に、ラップは音楽ジャンル、そしてカルチャーとしても根付き始めた。女性ラッパーがその流れをさらに加速させていきそうだ。

(ライター 中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2019年5月号の記事を再構成]

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