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カリスマの直言

長期投資で企業応援 盛り上がる地域経済(澤上篤人) さわかみ投信会長

日経マネー

2019/6/24

写真はイメージ=PIXTA
日経マネー

昔から「天下の回り物」とか「使ってなんぼ」といわれるように、本来、お金は世の中を回るものだし、回すこと自体に価値がある。この「回す」という肝心なところがすっぽり抜け落ちて経済活動の低迷にあえいでいるのが今の日本だ。今月は、長期投資の力でお金を回して、地域経済の活性化に取り組む徳島のケースを草刈と紹介しよう。

■お金を使わないと経済も地域も弱る

澤上篤人(以下、澤上) 日本経済がジリ貧状態に陥った原因は、ひとえに皆がお金を使わなくなったからだ。家電などの耐久消費財はあまねく各家庭に行き渡り、需要は買い替えばかり。経済が成熟したということだけど、一国の経済が成熟すると、企業の生産設備は余り、投資意欲も薄れる。国民の間でもお金を使う機会が減り、個人消費はガクーンと落ち込む。当然、成長率も一気に下がる。

草刈貴弘(以下、草刈) 設備投資というと増産や事業拡大というイメージがありますが、生産性の改善や、さらに付加価値の高いモノを作るための投資もあるはずです。

平成バブルの崩壊以降、日本全体が不良債権の処理にもたついている間、多くの企業は現状維持が精いっぱいで、成長への投資を怠ってきた。そのツケが今ごろになって回ってきているのではないでしょうか。

澤上篤人氏(撮影:竹井俊晴)

澤上 企業が現状維持にきゅうきゅうとしている間、個人もお金を使わず、せっせと貯め込んできたんだ。統計によると家計の現金・預金残高は、1989年末の461兆円から、昨年末の984兆円まで、何と523兆円も膨らんでいる(日銀・資金循環統計)。この29年間で年平均18兆円もの個人マネーが消費に向かわず、現金、預貯金として積み上げられてしまった。

仮に、毎年18兆円が消費に向っていたら、単純計算ながら日本経済は年3.5%の成長を続けていたことになる。今頃、日本は1300兆円を超すGDP(国内総生産)を誇り、世界第2位の中国経済といい勝負をしていたはず。

ところが、日本人はお金を使わなかった。それで経済が成長しなくなり、将来に不安を覚え、さらにお金をため込もうとするという悪循環に陥っている。このダラシない循環を断ち切るには、とにかく国民がお金を使うことだ。

草刈 お金の置き場所も問題です。ほとんど増えない預貯金かタンスの中。これでは企業がいくら良い物を作ったり、いいサービスを提供したりしても、お金が回ってこないから店を畳むしかなくなる。

「お金は経済の血液」という表現がありますが至言です。お金が回らないと経済がどんどん弱っていく。お金を使って回るようにしないといけない。

ただ、希望の兆しもあります。これまで全く光が当たらなかった地域やお店にお金が回るようになって、新たな展開を見せるような話を聞くようになりました。

食で地方(の生産者)と都市(の消費者)をかき交ぜるといったコンセプトを掲げたビジネスや、最初から世界を相手に商売することを意識して新しい特産品作りに挑んでいる人たちです。

まだまだ局所的な動きですが、動き出した人とそうでない人の違いは、10年くらいたつと、はっきりしてくるのではないでしょうか。

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