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エステーの鈴木社長 女性の視点、経営に生かす
エステーの鈴木貴子社長は「会社と自分を成長させるルール」をテーマに講演した。女性の視点や外資系でラグジュアリーブランドマーケティングやブランディングに約20年従事した経験を経営に生かし、消費者に愛される会社をどう目指してきたかを説明した。
2013年に社長に就任した鈴木社長は「最初は社長が女性でも男性でも変わらないと考えていたが、女性リーダーであるがゆえに常識とされていたことをおかしいなと思う機会があった」と話す。
同社のトイレ用消臭スプレーのデザインを、香りをイメージするイラストに変えた。「以前はなんと便器の絵がついていた」という。「男性社員は商品の機能価値はよく理解する。一方で、女性なら『こんなの部屋に置きたくない』とすぐ分かるが、男性にはデザインや香りといった情緒価値をなかなか理解してもらえなかった」と振り返る。
「男性が中心になって回してきたビジネス界の空気を変えるには、女性たちが自分の強みを知って堂々と声をあげる必要がある」。女性であることに加え、他の業界や外資系企業で働いたことが役立った経験から「強みだと自覚していないことが実は大きなアドバンテージだったりする」と語った。
自身のブランド価値を高めるために「自分が掲げるビジョンや戦略、発言が一貫するように心がけている」と話す。公式の場での服装を白色で統一していることもブランド戦略の一つだと明かした。黒や灰色のスーツ姿の男性が多い中でぱっと目を引くほか、「(汚さないように)食べ方がきれいになるし、背筋も伸びる」。
子どもの時から意識していたという心豊かな暮らしの実現を胸に「多くの方々から親しまれて愛される会社でありたい」と締めくくった。
野村アセットマネジメントの中川社長 目の前のチャンス、逃さずに
4月に女性初の社長に就任した野村アセットマネジメントの中川順子社長は「キャリアアップのチャンスを逃さない生き方」と題し講演した。一般職から総合職への職種転換や、会社を退職後に復職した経験をもとに女性のキャリア形成について語った。
中川氏は入社後から今まで、与えられたチャンスを「まず受け取ってみよう」と前向きに捉えてきた。1988年に野村証券に一般職で入社。当時は女性は結婚退職が当たり前だった。社長になるなど考えられなかったが、社内の様々な仕事に興味を持ち始めるようになった。職種転換の制度に先輩が手を挙げた影響もあり「きっと機会が増えるはず」と3年目で総合職に転換した。
その後夫の海外転職が決まり、選択を迫られた。「これまで好きに仕事をしてきたので、思い切って(赴任先の)香港に付いていこう」と2004年に退職した。4年後に帰国。元上司と連絡を取っていた縁もあり、「どんなポジションでも仕事内容でもよい」という思いで野村証券のグループ会社に喜んで飛び込んだ。
復職した08年に社長に就いた。チャンスの度に悩むが、責任あるポストを目の前にして思いをはせるのはチャンスをくれた人だ。「私に任せると決めた人の思いを真っすぐに受け止めよう」と考えてきた。
現在は投資や運用に関心が小さかったり「怖い」と感じたりしている人に資産運用を勧めることに力を入れる。「企業に投資することは資産形成に加え、社会貢献の側面がある」と強調する。顧客の将来の楽しみにつながるように、裾野を広げたいと考えている。
女性が男性と同様にキャリアを引き継げるように、今後はできることを手がけたいという。「また自分の前にチャンスが差し出されれば、つかんでみようと思う」と話した。